Movements
流派でたどる
ゴシック
Gothic art
12世紀半ばにパリ近郊で生まれ、ヨーロッパ各地に広まった美術の様式。尖頭アーチで天へ伸びる聖堂の建築に始まり、ステンドグラスや写本、彫刻、金地の板絵に及んだ。細長い人体と、流れるような衣の線が特徴である。
初期ルネサンス
Early Renaissance
15世紀のイタリア、とくにフィレンツェで展開した美術。線遠近法と人体の観察、古代ギリシャ・ローマへの関心を柱に、中世の絵画から現実の空間と人間を描く絵画へと大きく転換した。
初期フランドル派
Early Netherlandish painting
15世紀から16世紀初めにかけて、ブルゴーニュ公国の支配したネーデルラント南部で活躍した画家たち。油絵具を薄く重ねる技法で、身近な事物や人の顔を驚くほど精緻に描き、北方ルネサンスの出発点となった。
北方ルネサンス
Northern Renaissance
15〜16世紀に、ネーデルラントやドイツなどアルプス以北で展開した美術の総称。油彩による緻密な写実と身近な事物への関心を特徴とし、イタリアのルネサンスと影響を与え合いながら独自の道を歩んだ。
ヴェネツィア派
Venetian school
15世紀後半から16世紀にかけて、ヴェネツィア共和国で発展した絵画の流派。線描を重んじたフィレンツェやローマに対し、油彩による豊かな色彩と光で、人物と風景を大気のなかに描き出した。
盛期ルネサンス
High Renaissance
15世紀末から1527年のローマ劫掠までのおよそ30年間、フィレンツェとローマを中心に展開したルネサンス絵画の頂点。レオナルド、ミケランジェロ、ラファエロが、均衡のとれた構図と自然な人体表現を完成させた。
マニエリスム
Mannerism
1520年頃から16世紀末にかけて、イタリアを中心に広まった美術の様式。盛期ルネサンスの調和を土台に、引き伸ばされた人体やねじれたポーズ、不自然な色彩で、技巧と緊張に満ちた画面を作り出した。
イタリア・バロック絵画
Italian Baroque painting
16世紀末のローマとボローニャに始まり、17世紀のイタリア各地で展開した絵画。カラヴァッジョの強い明暗と写実、カラッチ一族の古典的な構成という二つの流れが、対抗改革の教会と貴族の宮殿を劇的な大画面で飾った。
古典主義
Classicism
17世紀のローマとフランスで、古代の彫刻とラファエロを手本に、明快な構図と理想化した人体で物語を描いた絵画の流れ。カラッチに始まり、ドメニキーノを経て、ローマに住んだフランスの画家プッサンが理知的な画面に高めた。
オランダ黄金時代の絵画
Dutch Golden Age painting
17世紀、スペインから独立したネーデルラント連邦共和国(現在のオランダ)で花開いた絵画。宮廷や教会に代わって市民が買い手となり、風景・静物・室内の暮らしなど、身近な世界を精緻に描く絵が大量に生まれた。
スペイン・バロック絵画
Spanish Baroque painting
17世紀のスペインで展開したバロック絵画。カラヴァッジョに通じる強い明暗と飾らない写実で、対抗改革の信仰心を映す宗教画や宮廷の肖像画、静物画が描かれ、スペイン絵画の黄金時代を築いた。
フランドル・バロック絵画
Flemish Baroque painting
17世紀の南ネーデルラント(現在のベルギー)で展開したバロック絵画。スペインの統治とカトリックの教会の注文を背景に、アントウェルペンのルーベンスを中心として、祭壇画、神話画、肖像画が大きく花開いた。
ロココ
Rococo
18世紀前半のパリに生まれ、ヨーロッパ各地に広まった装飾的な様式。貝殻や渦巻きを思わせる非対称の曲線と淡い色調で貴族の邸宅の室内を軽やかに飾り、絵画では恋愛や田園の遊びが好んで描かれた。
新古典主義
Neoclassicism
18世紀半ばから19世紀初めにかけて、古代ギリシア・ローマの美術を手本に広がった美術の動向。軽やかなロココに代わって、明確な輪郭と厳格な構図で、古代の英雄の徳や崇高な主題を描いた。フランスのダヴィッドとアングルが代表する。
ロマン主義
Romanticism
18世紀末から19世紀半ばにかけてヨーロッパに広がった芸術の動向。理性と古典の規範よりも、個人の感情と想像力、自然の崇高さ、異国や過去への憧れを重んじ、劇的な構図と色彩で人間の情熱と恐れを描いた。
アカデミック美術
Academic art
美術アカデミーの教育と展覧会制度のもとで作られた絵画と彫刻をいう。デッサンを土台に主題の格付けを守り、筆跡を残さない仕上げと理想化された人体を良しとした。19世紀のフランスで頂点に達した。
ハドソン・リバー派
Hudson River school
19世紀のアメリカで、ニューヨークを拠点に風景を描いた画家たちの流れ。トマス・コールを祖とし、ハドソン川流域やキャッツキル山地、のちには西部の雄大な自然を、細かな写実と明るい光で描いた。
デュッセルドルフ派
Düsseldorf school of painting
19世紀のドイツ、デュッセルドルフ美術アカデミーを中心に生まれた絵画の流れ。入念な下絵と緻密な仕上げ、誰にでも筋のわかる場面づくりを重んじ、歴史画や風俗画、風景画で19世紀半ばのヨーロッパとアメリカに広く影響した。
写実主義
French Realism
1840年代のフランスに興った美術の動向。神話や歴史の理想化された世界に代わり、農民や労働者、同時代の人々の暮らしを、美化せずありのままに描こうとした。クールベを旗手に、ミレーやドーミエらが活躍した。
ネオ・グレック
Neo-Grec
1847年のパリのサロンで注目された、フランスの若い画家たちの一派。ジェロームを中心に、古代ギリシアの人々の日常の一場面を、考古学的な正確さと明るい色、なめらかな仕上げで描いた。
ラファエル前派
Pre-Raphaelite Brotherhood
1848年、ロンドンで若い画家たちが結成した芸術家の集まり。ラファエロ以後の型にはまった美術を退け、それ以前の中世や初期ルネサンスの誠実さに帰ろうとした。自然を細部まで観察した鮮やかな画面で、ヴィクトリア朝の美術を揺さぶった。
唯美主義
Aestheticism
19世紀後半のイギリスを中心に広がった芸術運動。絵画は道徳や物語を語る手段ではなく、色と形の調和そのものに価値があるとする「芸術のための芸術」を掲げ、室内装飾や工芸にも及んだ。
印象派
Impressionism
1860年代末から1880年代にかけて、フランスで生まれた絵画の運動。移ろう光と大気、都市と郊外の現代生活を、屋外で素早い筆触と明るい色で描き、1874年から1886年まで8回のグループ展を開いた。
移動派
Peredvizhniki
1870年、帝国美術アカデミーの束縛を離れたロシアの画家たちが結成した移動展覧会協会とその画家たち。展覧会を各地の都市に巡回させ、農民や庶民の暮らし、ロシアの歴史と風景を力強い写実で描いた。
新印象派
Neo-impressionism
1880年代半ばのフランスに生まれた動向。印象派が直感でつかんだ光を、色彩理論にもとづく規則的な点の並置に置き換え、画面を計算によって組み立てようとした。スーラが始め、シニャックが理論を広めた。
素朴派
naïve art
美術学校やアカデミーで正式な教育を受けずに描いた、独学の画家たちの絵画。19世紀末のフランスで、アンリ・ルソーを先駆けとして「素朴(ナイーヴ)」の名で呼ばれるようになり、両大戦間に一つの流れとして注目された。
ポスト印象派
Post-impressionism
1880年代後半から1900年代初めのフランスで、印象派の明るい色彩を受け継ぎながら、光の再現を超えて構造や象徴、感情を画面に求めた画家たちの総称。セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホ、スーラらが含まれる。
ポン=タヴァン派
Pont-Aven School
1886年から1890年代にかけて、フランス西部ブルターニュの村ポン=タヴァンに集った画家たちの流れ。目に映る光の再現を離れ、濃い輪郭線と平らな色面で、記憶と感情から画面を組み立てることを目指した。
象徴主義
Symbolism
19世紀末のヨーロッパで、目に見える現実の再現よりも、夢や神話、魂や死といった目に見えないものを、暗示的な形と色で表そうとした芸術運動。詩から始まり、絵画ではフランスとベルギーを中心に広がった。
アール・ヌーヴォー
Art Nouveau
19世紀末から20世紀初めにかけてヨーロッパ各地に広がった装飾様式。植物のうねりに学んだ曲線と左右非対称の構図を特徴とし、建築、家具、ガラス、ポスター、絵画までを一続きのものとして設計した。
フォーヴィスム
Fauvism
1905年ごろから1908年ごろにかけて、マティスやドランらがフランスで展開した絵画の動き。見たままの色にとらわれない強い色と、荒々しく大胆な筆づかいを特徴とし、20世紀最初の前衛運動とされる。
表現主義
Expressionism
20世紀初めのドイツとオーストリアを中心に、見たままの世界ではなく、不安や苦悩、高揚といった内面の感情を、強い色と歪んだ形で表そうとした芸術の動き。絵画のほか、版画、文学、演劇、映画にも広がった。
未来派
Futurism
1909年、イタリアの詩人マリネッティの宣言に始まった芸術運動。過去の文化を激しく否定し、機械や速度、近代都市の躍動とエネルギーを、絵画・彫刻・建築・詩などでたたえた。
シュプレマティスム
Suprematism
ロシアの画家カジミール・マレーヴィチが名づけた抽象絵画の動向。物の描写を捨て、正方形や円、長方形などの基本的な幾何学形を限られた色で白い地に浮かべる。1915年の「0,10」展で世に出た。
新造形主義
Neo-Plasticism
オランダの画家ピート・モンドリアンが唱えた抽象絵画の理論と様式。水平と垂直の直線、赤・黄・青の三原色と白・黒・灰色だけを用い、1917年創刊の雑誌『デ・ステイル』を通じて広まった。
リージョナリズム
Regionalism
1930年代のアメリカで、中西部の画家たちが故郷の農村の暮らしや風景、郷土の歴史を、誰にでも読める写実で描いた絵画の動向。大恐慌の時代に広く支持された。「地方主義」とも訳される。