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《雪中の狩人》

Jagers in de sneeuw
《雪中の狩人》ピーテル・ブリューゲル(父)
Wikimedia Commons / ウィーン美術史美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ピーテル・ブリューゲル(父)
制作年
1565年
素材
オーク・パネル / 油絵具
寸法
116.5 × 162 cm
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1565年、アントウェルペンの商人ヨンヘリンクの注文で描かれた季節の連作の一点。獲物の乏しい狩人たちが犬を連れて雪の村へ下り、凍った池では人々が滑る。ヨーロッパ絵画で初めて冬そのものを正面から描いた風景画とされる。

概要

《雪中の狩人》(蘭: Jagers in de sneeuw、独: Die Jäger im Schnee)は、ピーテル・ブリューゲル(父)が1565年にオークの板に描いた油彩画である。アントウェルペンの商人ニコラース・ヨンヘリンクの注文による、季節の移り変わりを描く連作の一点で、冬にあたる。館は本作を、ヨーロッパ絵画で最初の本格的な冬の風景画と位置づけている。ウィーン美術史美術館が所蔵する。

来歴

連作は6点からなり、《暗い日》(早春)、《干草の収穫》(初夏)、《穀物の収穫》(夏の終わり)、《牛群の帰り》(晩秋)と本作の5点が現存する。残る1点は失われたとも、そもそも描かれなかったともいわれる。館の記録によれば、本作はヨンヘリンクの所蔵ののち、1594年にアントウェルペン市から大公エルンストへ贈られ、1595年の大公の遺産、皇帝ルドルフ2世、レオポルト・ヴィルヘルム大公のコレクションを経て現在に至る。所蔵番号はGG 1838で、絵画館の第10室に掛かる。同じ連作の《暗い日》と《牛群の帰り》も同館にあり、《穀物の収穫》はメトロポリタン美術館、《干草の収穫》はプラハにある。

画面の読み解き

左手前の丘を、3人の狩人が猟犬の群れを連れて下りていく。犬は頭を垂れ、男たちの槍に吊されているのはキツネ1匹だけで、猟果の乏しさが伝わる。手前の木立の下では、人々が藁を焚いて豚の毛を焼いている。視線はそのまま低い村へ導かれ、凍った二つの池では、村人がスケートやカーリングに似た遊びに興じる。さらに奥には雪の平野が広がり、右手には切り立った岩山が重なる。空は灰緑色に沈み、木々の上をカラスが舞い、枝にはカササギがとまる。カササギは当時のネーデルラントで不吉の徴とされ、ブリューゲルは晩年の《絞首台の上のカササギ》でも絞首台にとまらせている。

技法・様式

オークの板に油彩で、大きさは116.5×162センチ。手前を茶と黒、中景を白、遠景を青緑に塗り分け、空気遠近法で奥行きをつくる。高い視点から村も野も山も一望に収める構成は、パティニール以来の世界風景の伝統を受け継ぐが、ここでは土地ではなく季節そのものが主題になっている。左手前から右奥へ下る斜面と、並木の幹が刻む斜めの列が、視線を画面の奥へ運ぶ。人も鳥も細い筆で小さく描かれ、雪の白い面が画面全体をつないでいる。

意義

連作は、中世以来の月暦図の伝統を受け継いでいる。ただし、月ごとの労働を並べる暦の挿絵とは違い、ここでは一枚の大画面に季節の空気そのものが定着されている。1565年前後のヨーロッパは寒冷化した「小氷期」の入り口にあたり、厳しい冬が続いた時期でもあった。描かれた土地は特定されておらず、レマン湖の東端からの眺めとする説や、インスブルック近郊とする説がある。美術史家マーティン・ケンプは、世俗的な主題でこれほど人気のある絵はおそらくないと述べており、タルコフスキーの『惑星ソラリス』や『鏡』をはじめ多くの映画にも引用された。子のピーテル・ブリューゲル(子)による小さな模作は、東京富士美術館が所蔵する。