《床削り》
がらんとした部屋で、上半身裸の三人の男がひざまずき、床板を削っている。窓から差す光が床に照り返し、板の筋と、丸まって散らばる削りくずを浮かび上がらせる。
概要
《床削り》(仏: Raboteurs de parquets)は、フランスの画家ギュスターヴ・カイユボットが1875年に描いた油彩画である。縦102センチ、横147センチのキャンバスで、パリのオルセー美術館が所蔵する。所蔵館によれば、都市の労働者を描いた最も早い作品の一つである。農民(ミレーの《落穂拾い》)や田舎の労働者(クールベの《石割人夫》)はたびたび描かれてきたが、町の職人が絵の主題になることはごくまれだった。
画面の読み解き
がらんとした部屋で、上半身裸の三人の男がひざまずき、両手で刃物を引いて床板を削っている。奥の窓には唐草模様の鉄の手すりがあり、差し込む光が床に照り返して、板の筋を浮かび上がらせる。床には削りくずが丸まって散らばり、金づちなどの道具が置かれている。右の壁ぎわには瓶とグラス、奥の隅には脱いだ服が見える。壁は額縁のような羽目板で飾られている。右下に「G. Caillebotte 1875」の署名と年記がある。
技法・様式
所蔵館によれば、裕福なブルジョワだったカイユボットは、クールベやミレーと違って、社会的、道徳的、政治的な主張を作品に持ち込まない。身ぶりや道具、小物まで調べ上げた描写は、画家を最も熟練した写実の画家の一人に位置づける。画家はレオン・ボナのもとでアカデミックな修業を積んでおり、見下ろす視点と床板の並びで遠近を強めた構図は伝統にかなっている。画面のすべての部分を一つずつ素描し、方眼を使って画布に写した。裸の上半身は古代の英雄のようである。しかしカイユボットは、こうしたアカデミックな訓練にとどまらず、その厳密さを生かして、同時代の世界をかつてない仕方で探った。
来歴
所蔵館によれば、本作は1875年のサロンに出されたが、審査員に落とされた。生々しい写実に衝撃を受けたとみられ、「下品な主題」と評した批評家もいた。若い画家はそこで印象派に加わることを決め、1876年の第2回印象派展に本作を出品する。この展覧会では、ドガも初めてアイロンをかける女たちの絵を見せた。批評家たちはこの大きな現代の画面に強い印象を受けたが、ゾラは「正確さのあまりブルジョワ的になった絵」と批判した。本作は1877年5月28日にカイユボット、ピサロ、ルノワール、シスレーがパリのドルーオ競売場で開いた売り立てに出たが、画家自身が買い戻した。1894年、画家の没後に、遺言執行者のルノワールを通じて相続人からの寄贈として国が受け入れた。1896年にリュクサンブール美術館に入り、ルーヴル美術館を経て、1986年にオルセー美術館に移された。
意義
オルセー美術館のサイトに載るファニー・マッツの記事(2024年)によれば、カイユボットが1894年2月21日に没すると、印象派の仲間の作品を集めた収集が、28歳の1876年に書いた遺言により国に遺贈された。本作と《屋根の眺め(雪の効果)》は、この遺贈とは別に弟マルシアルが1894年に国へ贈ったもので、1897年2月9日にリュクサンブール美術館で遺贈の作品が公開されたとき、そのそばに並んだ。『ラルース』の絵画事典は、本作が長いあいだカイユボットの最もよく知られた作品だったとする。