《日傘のリーズ》
- 作者
- ピエール=オーギュスト・ルノワール
- 制作年
- 1867年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 184 × 115.5 cm
- 所蔵
- フォルクヴァンク美術館
- 時代
- 写実・印象派
森の空き地に、白いモスリンの服を着た若い女が立っている。黒いレースの日傘が顔に影を落とし、服の白は木漏れ日を受けて、葉の緑をかすかに映す。
概要
《日傘のリーズ》(仏: Lise – La femme à l'ombrelle)は、ピエール=オーギュスト・ルノワールが1867年に描いた油彩画である。縦184センチ、横115.5センチ。ドイツ・エッセンのフォルクヴァンク美術館が所蔵する。当時の恋人リーズ・トレオを森の中にほぼ等身大で描いた作品で、1868年のサロンに入選し、若いルノワールの名を知らせた。印象派が生まれる前夜に、写実と戸外の光が出会った一点である。
画面の読み解き
森の空き地に、女が全身像で立つ。体はこちらに向け、顔は画面の左へそらして、黒いレースの日傘の影に沈めている。頭には小さな麦わら帽子、首もとには赤いリボン。白いモスリンの服は胸の下で黒い帯に締められ、帯の端が裾近くまで長く垂れる。左手は体の脇に下ろされている。背後の太い木の幹には、画家とリーズの頭文字とみられる文字が刻まれ、足もとの草地には日だまりが広がる。右下に「A. Renoir. 67」の署名と年記がある。
技法・様式
白い服は、日なたと日陰で異なる色を帯びて描き分けられている。批評家テオフィル・トレ=ビュルガーは、白いガーゼの服が全身に光を浴びながら、葉の照り返しでかすかに緑を帯びていると評した。顔を日傘の影に入れ、服だけを光にさらす大胆な対比は、同時代のクロード・モネの戸外の人物画や、ギュスターヴ・クールベの人物画、白づくしの《白のシンフォニー No.1:白衣の少女》と比べられてきた。等身大の人物を戸外の光の中に置く試みは、戸外制作を重んじる印象派の出発点の一つとなった。
来歴
1868年のサロンでは評価が分かれ、戯画家アンドレ・ジルらに揶揄される一方、批評家ザカリー・アストリュクは、マネの《オランピア》やモネの《カミーユ》と並ぶ作として称えた。1873年に批評家テオドール・デュレが1200フランで購入し、1890年に画商ポール・デュラン=リュエルへ売られた。1901年、カール・エルンスト・オストハウスがハーゲンに開いたフォルクヴァンク美術館のために取得し、1922年に同館とともにエッセンへ移った。所蔵番号G 144。
意義
リーズ・トレオは1865年から1872年まで、ルノワールの20点を超える作品のモデルとなった。本作はその最初の大作で、翌1869年には《夏・習作》がサロンに続く。美術史家ジョン・ハウスは、肖像画と風俗画の境目を探る作品と位置づけている。白い服に落ちる光と影という主題は、のちの印象派の画面へと引き継がれていった。描かれた森は、所蔵館はフォンテーヌブローの森とするが、近年はシャンティイの森とする説もある。