《馬の市》
- 作者
- ローザ・ボヌール
- 制作年
- 1852–1855年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 244.5 × 506.7 cm
- 所蔵
- メトロポリタン美術館
- 時代
- 写実・印象派
並木の下の土ぼこりの道を、灰色のまだら馬や黒い馬が、男たちに引かれて駆け抜ける。中央では黒馬が後ろ脚で立ち上がり、青い上着の男が懸命に手綱を押さえる。左奥にはサルペトリエール病院の丸屋根がかすむ。
概要
《馬の市》(仏: Le Marché aux chevaux、英: The Horse Fair)は、ローザ・ボヌールが1852年から1855年にかけて描いた油彩画である。縦244.5センチ、横506.7センチの巨大なキャンバスで、ニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵する。所蔵館によれば、ボヌールの最もよく知られた作品で、パリの並木のある大通りで開かれていた馬の市場を描いている。すでに動物画家として名を成していたボヌールは、1853年のサロンに本作を出品し、広く称賛された。
画面の読み解き
所蔵館によれば、舞台はサルペトリエール病院に近いオピタル大通りの馬市で、病院の丸屋根が左奥に見える。画面いっぱいに、売り手の男たちが馬を引いて、土ぼこりの道を行き交う。手前では灰色のまだら馬が首を高く上げて進み、中央では黒い馬が後ろ脚で立ち上がり、青い上着の男がその手綱を押さえる。白い馬も前脚を跳ね上げ、周りの男たちは引き綱や鞭で馬を御そうとする。右奥では、乗り手を乗せた馬が並木の陰へ走り去る。ロンドンのナショナル・ギャラリーによれば、描かれた馬の多くは、力強い荷役馬のペルシュロン種である。
技法・様式
所蔵館によれば、ボヌールはこの絵のために、1年半にわたって週2回馬市に通い、素描を重ねた。人目を引かないよう、男の服装をして出かけたという。構図には、イギリスの画家ジョージ・スタッブス、テオドール・ジェリコー、ウジェーヌ・ドラクロワ、そして古代ギリシャの彫刻に学んだ。ボヌールは本作を、自分の「パルテノンのフリーズ」と呼んでいる。馬の列が横長の画面を帯のように流れていく構成は、浮き彫りの行列を思わせる。
来歴
所蔵館によれば、ボヌールは1855年に画面に手を加え、そのため署名の年記「1853」のあとに「5」の数字を書き足した。本作はイギリスの画商に売られ、その画商がイングランド各地で展示した。ヴィクトリア女王がバッキンガム宮殿での内覧を求めたとも伝えられる。1887年、コーネリアス・ヴァンダービルトが本作を購入し、同館に寄贈した。所蔵番号87.25。2026年10月時点では、5番街の本館の展示室812に展示されている。
ナショナル・ギャラリーによれば、同館の縮小版(1855年、縦120センチ、横254.6センチ)は、巡回のあいだに版画を作るために描かれた自筆の別作である。画商エルネスト・ガンバールのため、版画家トマス・ランドシーアが用いるように描かれ、1855年8月までにジェイコブ・ベルに売られて、1859年に同館へ遺贈された。
意義
ナショナル・ギャラリーによれば、本作は1853年のサロンで大評判となり、イギリスとアメリカを巡ってボヌールに国際的な名声をもたらした。生涯で最も大きく、最も野心的な作品であり続けたという。男装して市場に通い、生きた馬の力と動きを観察から組み上げた本作は、動物画家としてのボヌールの名を決定づけた。