《村の眺め》
傘のように枝を広げる松の木陰で、白い縞のドレスに赤い帯を締めた少女が地面に座り、まっすぐこちらを見る。眼下には緑の木立と蛇行する川が広がり、その向こうの丘に、強い日差しを浴びた村の家々が白く輝く。
概要
《村の眺め》(仏: Vue de village)は、フランスの画家フレデリック・バジールが1868年の夏に描いた油彩画である。縦137.5センチ、横85.5センチ。モンペリエ郊外の一家の領地メリックで、松の木陰に座る少女と、川の向こうのカステルノー村を描く。人物を風景の中に置こうとしたバジールの最初の大きな成功作とされ、生まれ故郷のファーブル美術館が所蔵する。
画面の読み解き
所蔵館によれば、一家の言い伝えでは、モデルは両親の領地のイタリア人の小作人の娘である。少女は日差しを背にして松の根もとの地面にじかに座り、祭りの日のための、ピンクの細い縞の入った白いモスリンのドレスをまとって、画家をまじめなまなざしで見つめる。その下には川がゆるやかに蛇行し、奥にはカステルノーの村とロマネスクの教会の鐘楼が見える。カタログ・レゾネによれば、頭のリボン、ドレスの縞、幅広の帯の赤は互いに響き合い、モデルよりも画面を組み立てる画家の配慮を示す。右の松は、画面を縦にも横にも区切る額縁の役を果たしている。後ろ向きの少女が見る者の目を村へ導く《ピンクのドレス》とは逆に、ここでは少女がこちらの視線をとらえて離さず、村は脇役にとどまる。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。右下に「F. Bazille Juillet 1868」の署名と年記がある。所蔵館は、並外れた明るさと色の輝き、ドレスの白に重ねた繊細なグレーズを挙げ、モネのようにぼかしや曖昧さに流れない、しっかりとした筆づかいが、瞬間の心地よい感覚を写し出していると述べる。光の中に組み立てられた村の家々は、すでにポール・セザンヌを予告している。カタログ・レゾネによれば、画家は1868年3月の父への手紙で、メリックでの仕事を待ちきれないと書き、衣服をまとった若い娘のモデルを探していた。同書は本作を、《ピンクのドレス》や《家族の集い》に続いて、戸外制作と、風景の中に人物を置くことへの画家の関心を確かめる作品とする。
来歴
カタログ・レゾネによれば、1869年2月に画家は両親に、この絵が多くの画家仲間に大好評だったと書き送った。同年のサロンに入選したが、同時に出した《網を持つ漁師》は落選した。所蔵館によれば、サロンで本作を見たベルト・モリゾは、5月5日に姉エドマへ、「戸外に人物を置くこと」に今度こそ成功したようだと書いた。1898年に画家の母ガストン・バジール夫人がファーブル美術館に寄贈した。所蔵番号は898.5.1。現在は第39室に展示されている。
意義
カタログ・レゾネによれば、批評家ガストン・プーランは、本作によって「フランス絵画に新しい時代が開かれた」と書いた。詩人ポール・ヴァレリーもファーブル美術館でこの絵に打たれ、「この田園はほかのどれにも似ていない」と述べたという。所蔵館は本作を館を代表する傑作の一つとしている。