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《ゴルゴタの丘への行進》

The Procession to Calvary
《ゴルゴタの丘への行進》ピーテル・ブリューゲル(父)
Wikimedia Commons / ウィーン美術史美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ピーテル・ブリューゲル(父)
制作年
1564年
素材
オーク・パネル / 油絵具
寸法
124.3 × 170.6 cm
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1564年、ブリューゲルがオーク板に描いた大画面。十字架を担うキリストは画面の中央にいながら群衆に埋もれ、処刑場へ向かう人の波と広大な風景が、同時代のネーデルラントの光景として描かれる。

概要

《ゴルゴタの丘への行進》(英: The Procession to Calvary、独: Die Kreuztragung Christi)は、ピーテル・ブリューゲル(父)が1564年にオークの板に描いた油彩画である。《十字架を担うキリスト》とも呼ばれる。ゴルゴタの丘へ向かう刑の行列を、数百の人物と広大な風景のなかに描いた、画家の現存作では2番目に大きな作品で、ウィーン美術史美術館が所蔵する。

来歴

館の記録によれば、1566年にアントウェルペンの富裕な商人ニコラース・ヨンヘリンクの所蔵として記される。ヨンヘリンクは同じ年、月暦の連作を含む16点のブリューゲル作品を持っており、本作も彼の注文だった可能性がある。その後アントウェルペン市の所有となり、大公エルンストの遺産を経て、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世のコレクションに入った。1748年に宮廷の宝物庫から絵画館へ移され、1781年にプレスブルク(現ブラチスラヴァ)へ送られたとみられるのち、1783年には絵画館の記録に現れる。現在は同館の絵画館第10室に掛かり、所蔵番号は1025。画面右下に「BRVEGEL. MD.LXIIII」の署名と年記がある。

画面の読み解き

画面左下から右上へ、処刑場へ向かう人の流れが斜めに延びる。十字架を担うキリストはほぼ中央にいるが、赤い上着の騎馬の刑吏と群衆にまぎれ、探さなければ見つからない。右の丘にはすでに2本の十字架が立ち、3本目のための穴が掘られている。中景の荷車では2人の盗賊が僧に最後の告解をし、そのまわりを見物人が取り囲む。左には切り立った岩山がそびえ、その頂に風車が載る。手前の岩の高みには、気を失う聖母マリアを聖ヨハネと二人のマリアが支える一群が、ひときわ大きく描かれる。館の解説によれば、古風な衣をまとうのはこの一群だけで、ほかの人物はすべて画家の同時代の服装である。また、右端でただ一人キリストの方へ顔を向ける人物は、画家の自画像と考えられている。

技法・様式

オークの板に油彩で描かれ、大きさは館の実測で124.3×170.6センチ。十字架を担うキリストを多人数の行列として描く形式は、ヤン・ファン・エイク以来のネーデルラントの伝統を受け継ぐもので、その舞台を同時代の光景へ大きく広げた点が本作の新しさだと館は説明する。遠景を青くかすませる空気遠近法と、岩山を空へ突き出させるヨアヒム・パティニール以来のアントウェルペン派の手法によって、町、野、丘、遠い海までが一枚の画面に収まる。こうした一画面に世界を見渡す構図は世界風景と呼ばれる。

意義

聖書の場面を、同時代の処刑見物の光景として描いた点にこの絵の核心がある。絞首台や車刑の車が点々と立つ野、荷車の盗賊に群がる野次馬、雑踏で稼ぐ物売りやすりまで描き込まれ、人々は目の前の受難にほとんど関心を示さない。主役を群衆に埋めて見る者に探させる手法は、《洗礼者ヨハネの説教》や《サウロの回心》にも通じる。一方、前景の聖母の一群だけを別の時代の装いと大きさで描くことで、信仰の場面と現実の世界が一つの画面の中で区別されている。2011年には、本作を題材としたレフ・マイェフスキ監督の映画『ブリューゲルの動く絵』が公開された。