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《洗礼者聖ヨハネの説教》

The Sermon of Saint John the Baptist
《洗礼者聖ヨハネの説教》ピーテル・ブリューゲル
Wikimedia Commons / ブダペスト国立西洋美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ピーテル・ブリューゲル(父)
制作年
1566年
素材
板 / 油絵具
寸法
95 × 160.5 cm
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木々に囲まれた森の空き地に、貴族、兵士、農民、巡礼など、さまざまな身なりの人々がひしめき合い、奥で語る洗礼者ヨハネに耳を傾ける。手前では黒い服の男が、縞の毛布をまとった占い師に手相を見せている。

概要

《洗礼者聖ヨハネの説教》は、ネーデルラントの画家ピーテル・ブリューゲル(父)が1566年に描いた油彩の板絵で、ブダペスト国立西洋美術館が所蔵する。館が Google Arts & Culture に寄せた記録では、縦95センチ、横160.5センチ。所蔵番号は51.2829。館の解説は、本作をブリューゲルの作品のなかで鍵となる一点としている。

画面の読み解き

館の解説によれば、ここには、貴族、聖職者、兵士、市民、農民、フランドル人、スペイン人、ユダヤ人、ロマ、トルコ人、健やかな者と病める者という、魅力的なまでに多様な世界の全体が集まっている。館が GA&C に寄せた物語頁によれば、説教者の指さすしぐさは、「わたしは水で洗礼を授けるが、あなたがたの中には、あなたがたの知らない方がおられる」(ヨハネによる福音書1章26〜27節)という言葉に続くものである。手前の中央では、黒い服と白い襟からスペイン人とも思われる貴族が、説教者に背を向けて、縞の毛布にくるまった旅の占い師に手相を見せている。そのそばの男は、杖と貝殻で飾った帽子から巡礼とわかり、木の陰からは、説教に心を動かされない兵士が絵の外を見ている。右の大きな木の枝の上にも人々が腰かけ、劇場の桟敷のように群衆から少し離れて説教を眺めている。

技法・様式

物語頁によれば、パノラマ的な世界風景のために高い視点を好んだ先人たちと違い、ブリューゲルは低い視点を選んで、見る者が場面の一部であるかのような錯覚を生んだ。ブリューゲルの作品のなかで、物語と見る者の関係が最も親密で直接的になるのが、この晩年の絵である。生き生きとした写実的な風景は、ブリューゲルの身近な土地にも聖書の舞台にも似ておらず、1550年代前半にドイツからシチリアまで旅した経験を思わせる、画家の想像だけが生んだものである。群衆のなかに同じ姿勢、身ぶり、顔、服は二つとなく、手前と中景の人物の多くは背中を見せているが、顔の見えないそうした人物さえ描き分けられている。

来歴

物語頁によれば、ブリューゲルが本作を描いた1566年、ネーデルラントでは、スペインのカトリックの支配下にある町の外れで、カルヴァン派、ルター派、再洗礼派の人々が野外に集まってプロテスタントの説教を聞く非合法の集会(ハーヘンプレーケン)が数多く開かれていた。宗教改革の時代には、民衆にじかに救い主の到来を説いた旅の説教者ヨハネが、新たな重みと時事性をもって受けとめられた。手相見は、未来を読もうとすることが計り知れない神の意志を否むものとされたため、どのキリスト教の会派からも公には好まれなかった。

意義

館の解説によれば、ブリューゲルが関心を寄せたのは人類の大きな物語の英雄ではなく、素朴な人々が出来事をどう受けとめ、それが日々の暮らしにどう響くかだった。本作が語るのは違いではなく、キリストが全人類と結ぶ新しい契約と、それを予告する預言者の言葉のもとでの一体感である。物語頁は、聖書の場面を同時代に置き換えることでブリューゲルが、福音の永遠の真理を示すとともに、昔と同じく今も人は変わらぬ過ちやすさの枠のなかでしか神の言葉を受けとれないという、人類への判定を下そうとしたとしている。