クレジット方針 収録範囲について お問い合わせ
作品COLLECTION 画家ARTISTS 流派MOVEMENTS 時代PERIODS 所蔵MUSEUMS 様式史HISTORY 用語集GLOSSARY 検索SEARCH

《エドワード・D・ボイトの娘たち》

The Daughters of Edward Darley Boit
《エドワード・D・ボイトの娘たち》ジョン・シンガー・サージェント
Wikimedia Commons / ボストン美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ジョン・シンガー・サージェント
制作年
1882年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
221.93 × 222.57 cm
広告

薄暗いパリの住まいの玄関の間に、白い前掛けの姉妹が散らばる。手前の床には末娘が人形を抱えて座り、こちらを見つめる。左に一人が立ち、奥の暗がりでは二人が背丈より高い青い絵付けの壺のそばにたたずむ。

概要

《エドワード・D・ボイトの娘たち》(英: The Daughters of Edward Darley Boit)は、アメリカの画家ジョン・シンガー・サージェントが1882年に描いた油彩画である。縦横とも約2.2メートルの正方形のキャンバスで、ボストン美術館が所蔵する。パリに住むボストン出身の夫妻の4人の娘を描いた。所蔵館は、《マダムXの肖像》などと並ぶ画家の最も偉大な作品の一つとする。

画面の読み解き

所蔵館によれば、舞台はパリ8区フリードラン大通りにあった一家の住まいの玄関の間で、公でも私でもない場である。手前は明るいが、奥は鏡と照り返しが半ば光る、ぼんやりした客間へと沈んでいく。描かれたのは14歳のフローレンス、12歳のジェーン、8歳のメアリー・ルイーザ、4歳のジュリアである。手前の床に人形を抱えて足を投げ出して座る末娘ジュリアだけがこちらを見つめ、年長の娘たちは順に影の中へ退き、輪郭をあいまいにする。二人は顔もよく見えない。左奥と右端には、背丈を超える2本の日本の大壺が立つ。所蔵館によれば、19世紀後半に有田で西洋への輸出用に作られた一家の自慢の品で、娘たちと比べた大きさが、室内を不思議で魔法めいたものにしている。

技法・様式

キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、娘たちはほぼ同じ普段着の上に白い前掛けをつけ、画家はさまざまな光の中の白を描き分ける腕前を示した。画家は1879年にマドリードのプラド美術館でベラスケスを模写しており、《ラス・メニーナス》の謎めいた空間、暗く抑えた色調、まっすぐ見る者に向き合う王女のあり方をここに取り入れた。同時に、中央がほとんど空いた非対称の構図や家族どうしの隔たりには、同時代のエドガー・ドガの手法も重なる。

来歴

所蔵館によれば、本作は1882年秋にパリで描かれた。父エドワード(ネッド)・ボイトはハーヴァードで学んだ法律家から画家に転じた人で、母イザの相続した財産のおかげで一家は国外で暮らした。注文の経緯は詳しくわからないが、夫妻は伝統的な肖像を頼んだのかもしれず、画家の型破りな構想を受け入れた。絵は1883年のパリのサロンで公開された。館の学芸員エリカ・ハーシュラーによれば、1912年から館にあり、のちに4人の娘が父をしのんで館に寄贈した。所蔵番号は19.124。

意義

所蔵館の出版物によれば、本作は肖像画と風俗画、整った配置と気ままな一瞬の境を越える。それぞれの娘が一人ずつ描かれながら互いに関わらず、二人の顔が見えないことは、初めて公開されたとき批評家を戸惑わせた。ハーシュラーによれば、奥が暗がりに沈む構図は「四つの隅と空白」とも評された。作家ヘンリー・ジェイムズは画家に「人を打ちのめすほど不遜な才能」を認めたが、本作はそれを最もよく示す作品の一つとされる。