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《ラス・メニーナス》

Las Meninas
《ラス・メニーナス》ディエゴ・ベラスケス
Wikimedia Commons / プラド美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ディエゴ・ベラスケス
制作年
1656年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
320.3 × 279.1 cm
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マドリードの王宮の一室に、5歳のマルガリータ王女と女官たち、小人と犬、そして大きなカンバスに向かう画家自身がいる。奥の壁の鏡には国王夫妻が映り、見る者はその位置に立たされる。

概要

《ラス・メニーナス》(西: Las Meninas、「女官たち」の意)は、ディエゴ・ベラスケスが1656年に描いた油彩画である。縦320.3センチ、横279.1センチ。マドリードのプラド美術館が所蔵する。フェリペ4世のアルカサル宮にあった画家の仕事部屋を舞台に、王女と周囲の人々、画家自身、そして鏡に映る国王夫妻が一つの画面に収められている。

来歴

最初期の王室目録には《ラ・ファミリア》、すなわち「家族」の名で載っていた。1724年、画家で著述家のアントニオ・パロミーノが詳しい記述を出版し、描かれた人物がほぼ特定された。1734年のアルカサル宮の火災で損傷を受け、宮廷画家フアン・ガルシア・デ・ミランダが補修している。王女の左頬は絵具の失われ方が激しく、ほとんど塗り直された。元の額もこのとき失われ、画面は左右とも切り詰められているが、その時期を伝える記録はない。1794年の目録では《フェリペ4世の家族》とされ、1819年のプラド美術館の開館とともにその所蔵となった。館のカタログに《ラス・メニーナス》の題で載るのは1843年からである。所蔵番号はP001174。

画面の読み解き

前景の中央に立つのが、当時5歳のマルガリータ王女である。膝をついて金の盆の赤い小壺を差し出すのがマリア・アグスティナ・サルミエント、右で腰をかがめるのがイサベル・デ・ヴェラスコ。さらに右には小人のマリア・バルボラともう一人の小人、そして床に伏せた犬がいる。左手前では画家自身が大きなカンバスの陰から筆を止め、こちらを見ている。奥の壁の鏡にはフェリペ4世と王妃マリアナの上半身が映り、二人は画面の外、見る者の立つ位置にいることになる。その右の扉口では侍従ニエトが幕を上げ、逆光のなかに立つ。線遠近法の消失点はこの扉のあたりにあり、視線は画面の奥へ引き込まれる。

技法・様式

奥の壁に列をなして掛かるのは、ルーベンスの《変身物語》連作にもとづく絵と、婿で助手のマソによるヨルダーンスの模写で、画面のなかに絵を置く画中画の仕掛けになっている。天井の高い部屋は上方ほど暗く、奥の扉から差す光と左の窓からの光が空間を測らせる。遠いものほど輪郭をゆるめる空気遠近法が、鏡や扉までの距離を感じさせる。赤外線調査ではペンティメントが見つかり、画家自身の頭ははじめ逆向きに傾いていたことがわかっている。胸のサンティアゴ騎士団の赤い十字は、叙任された1659年より前には描けないもので、パロミーノは画家の没後に王の命で加えられたと伝える。

意義

バロックの画家ルカ・ジョルダーノはこれを「絵画の神学」と呼び、19世紀の画家トマス・ローレンスは「芸術の原理」と評した。描く者、描かれる者、見る者の位置が入れ替わり続ける構造は、ミシェル・フーコーが『言葉と物』(1966年)の冒頭で論じて以来、表象そのものをめぐる議論の出発点になっている。スペイン・バロック絵画の到達点であり、西洋絵画でもっとも論じられた一枚である。