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《家族の肖像(ベレッリ家)》

Portrait de famille
《家族の肖像(ベレッリ家)》エドガー・ドガ
Wikimedia Commons / オルセー美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
エドガー・ドガ
制作年
1858–1869年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
201 × 249.5 cm
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青灰色の壁紙の部屋に、黒い喪服の母と白いエプロンの娘二人、そして背を向けた父がいる。四人は同じ室内にいながら、誰ひとり視線を交わさない。二十代のドガが叔母一家を等身大に近い大きさで描いた群像肖像である。

概要

《家族の肖像(ベレッリ家)》(仏: Portrait de famille)は、エドガー・ドガが1858年から1869年にかけて描いた油彩画である。縦201センチ、横249.5センチ。パリのオルセー美術館が所蔵する。二十代のドガが、フィレンツェに亡命していた叔母一家を等身大に近い大きさで描いた群像肖像で、歴史画に用いられる画面の規模を家庭の室内に持ち込んだ点に特徴がある。

画面の読み解き

左に立つ黒衣の女性が、ドガの父方の叔母ラウラ・ド・ガである。父ルネ=イレール・ド・ガを亡くしたばかりで喪服をまとい、視線は画面の外へ向けられている。その父の肖像は、赤いチョークの素描として背後の壁に額入りで掛かる。故人を子孫の背後に置く画中画の配置で、三代がひとつの画面に収められている。手前に立つ長女ジョヴァンナは両手を前に組んで正面を向き、中央の椅子に腰かけた次女ジュリアは片脚を折りたたんで腰の下に入れ、顔だけを右へ向ける。右端の男は夫ジェンナーロ・ベレッリ男爵で、背を向けて肘掛け椅子に沈み、机の書類のほうを見ている。母と娘の側と父の側は机と椅子に隔てられ、視線はどこでも交わらない。

技法・様式

色は黒・白・灰青に切り詰められ、二人の娘の白いエプロンだけが明るい。青灰色の花柄の壁紙、金縁の鏡、模様のある絨毯が、抑えた色調のなかで室内の質感を支える。扉や鏡が開く奥行きは、かえって閉ざされた空気を強めている。構図はヴァン・ダイクらフランドルの巨匠の家族肖像に学んだものと指摘される。2023年の「マネ/ドガ」展に向けてフランス美術館修復研究センター(C2RMF)が科学調査を行い、六年ほどに及んだ制作のあいだに娘たちの顔が成長に合わせて描き直され、下描きと多数のペンティメントが重なっていることが確かめられた。

来歴

1858年から翌年にかけての冬、ドガはフィレンツェのベレッリ家に数か月滞在し、素描やパステルによる習作を重ねた。男爵は1848年の革命の失敗後、オーストリアの追及を逃れてナポリからこの地に移っていた。制作はパリのアトリエに戻ってから続き、完成まで長い時間がかかっている。1867年のサロンに《家族の肖像》の題で出品されたとみられるが、当時の批評は本作に触れていない。作品はその後も画家の手もとに残り、1917年の没後、翌1918年の第1回遺作売立でフェルス伯爵夫妻と弟ルネ・ド・ガの援助を得て国家が購入した。所蔵番号RF 2210。リュクサンブール美術館からルーヴル美術館(1929年)、ジュ・ド・ポーム(1947年)を経て、1986年にオルセー美術館へ移っている。2025年から2026年にかけて東京の国立西洋美術館で展示され、初めて日本で公開された。

意義

注文による家族肖像ではなく、画家が自らの意思で、身内の関係そのものを主題にした作品である。晴れやかに並ぶ記念の型を退け、同じ部屋にいながら心の離れた四人を、構図と色だけで語らせている。のちにドガが印象派の仲間として描く劇場や室内の情景に通じる観察の態度は、すでにここに現れている。