《総督レオナルド・ロレダンの肖像》
- 作者
- ジョヴァンニ・ベッリーニ
- 制作年
- 1501–1502年
- 素材
- 板(ポプラ材) / 油絵具
- 寸法
- 61.4 × 44.5 cm
- 時代
- ルネサンス
澄んだ青い背景の前に、ヴェネツィア総督が胸から上を斜めに向けて立つ。角形の総督帽をかぶり、金銀の糸で柘榴の文様を織った白い錦の外套をまとう。手前の大理石の欄干には、署名の紙片が貼られている。
概要
《総督レオナルド・ロレダンの肖像》は、ヴェネツィアの画家ジョヴァンニ・ベッリーニが1501年から1502年頃に描いた油彩の肖像画で、ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。館の記録では縦61.4センチ、横44.5センチのポプラ材の板に描かれ、画面には署名がある。所蔵番号はNG189で、16世紀のヴェネツィアの額に収められ、館の第63室に展示されている。描かれたレオナルド・ロレダンはヴェネツィア共和国の元首である総督で、1501年に選ばれ、1521年に亡くなるまでその地位にあった。
画面の読み解き
館の解説によれば、ロレダンは見られていることを知りながら、こちらに視線を返さない。それは見る者を対等に扱うことになるからで、共和国の元首と対等な者はいなかった。小さく深くくぼんだ淡い青の目は、何かを見定めるような鋭さと知性を感じさせる。一方で、唇の右のしわがわずかに深く、今にも皮肉な片笑いを浮かべそうにも見え、左目のまわりの光は率直さを与えている。画家は、総督の厳しさと判断力、鋭い機知と真実への率直さを同時に示しているかのようである。総督は最も華やかな儀式の日の白い衣を着ている。金銀の糸を織り込んだ高価な白い絹のダマスク織を何幅も縫い合わせた外套で、東地中海の織物に由来する柘榴の文様は、ルネサンスの布地で好まれた。白い総督の衣は、聖燭祭と受胎告知の祝日の行列のためにロレダン自身が取り入れたものである。よく見ると文様は上下が逆で、行列で人々が目にする背中の側で正しく見えるようになっている。こうした細部から、画家は想像ではなく実物を見て描いたと考えられ、おそらく外套を借りてじっくり描いた。
技法・様式
館によれば、それまでの総督の肖像は、支配者の肖像の慣例どおり厳格な横顔で描かれた。ベッリーニは、1470年代からヴェネツィアでアントネロ・ダ・メッシーナらが広めた新しい斜め向きの構図を用い、写実と心理の表現の可能性を十分に引き出した。ヤン・ファン・エイクやアントネロの肖像画と同じく、左からの強い光で顔の起伏を形づくり、乾きの遅い油絵具を巧みに使って色を溶け合わせ、肌の質感や首のたるみ、目のまわりの細かなしわまで自然に描いた。青い背景は、最も高価な顔料の一つであるウルトラマリンを白に混ぜてたっぷりと塗ったもので、総督のいる空間が限りなく広がる感覚を与える。腕を見せない半身像と欄干は、台座に据えた古代の皇帝の大理石の胸像を思わせる。外套の深いひだと「金の鈴」と呼ばれる飾りボタンの影は石の彫刻のような硬さを与えるが、光が金糸にあたる部分の短く厚い筆致が、これが冷たい石ではないことを思い出させる。署名は欄干に刻まれたようには描かれず、開いたばかりの紙片を大理石に貼ったように描かれている。館はこれを、さまざまな質感を描き分ける腕前を見せる、驚くほどの謙遜の見せかけとしている。
来歴
館によれば、総督宮殿の評議の間には歴代総督の肖像が並び、1474年からは兄ジェンティーレ・ベッリーニがその制作を担ったが、およそ100年後の火災で失われた。本作はその連作の一部ではなく、おそらく個人の注文で描かれた。1502年にヴェネツィアで刊行されたリディオ・カッティの詩がジョヴァンニ・ベッリーニをロレダンの肖像画家として挙げており、本作が1502年以前の作であることを示す。裏には身元の分からない二つの封印がある。ヴェネツィアのグリマーニ宮殿から初代コーダー卿(1821年没)が手に入れ、のちにフォントヒルのウィリアム・ベックフォードのコレクションに入った。1822年の売り立ての目録に載ったが売り立ては行われず、ベックフォードの手元に残り、1844年に館が彼から購入した。
意義
館によれば、本作でベッリーニは、彫刻の肖像を油彩の力で超えてみせた。表情は移ろうように見え、総督は生き生きと身近に感じられると同時に、遠く威厳ある存在としても現れている。2008年の「ルネサンスの顔」展や、2018年から2019年にロンドンとベルリンで開かれた「マンテーニャとベッリーニ」展にも出品された。同じ館には、同じ画家の《牧草地の聖母》もある。