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《牧草地の聖母》

Madonna of the Meadow
《牧草地の聖母》ジョヴァンニ・ベリーニ
Wikimedia Commons / ロンドン・ナショナル・ギャラリー / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ジョヴァンニ・ベッリーニ
制作年
1500–1505年
素材
板から合成板に移し替え / 油絵具
寸法
66.5 × 85.1 cm
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春の牧草地に、青い外套の聖母が座り、膝の上で眠る幼子に手を合わせる。背後には草を食む牛と牧人、城壁に囲まれた町と雲の浮かぶ空が広がり、左の枯れ木には一羽の鳥がとまる。

概要

《牧草地の聖母》は、ヴェネツィアの画家ジョヴァンニ・ベッリーニが1500年から1505年頃に描いた油彩画で、ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。館の記録では縦66.5センチ、横85.1センチで、もとは板に描かれ、のちに合成板に移し替えられた(油彩転写)。所蔵番号はNG599で、16世紀のイタリアの額に収められ、館の第63室に展示されている。

画面の読み解き

館の解説によれば、草の茂る野に座った聖母マリアが、膝の上で眠る幼子キリストを拝んでいる。指先をそっと合わせて祈る両手がつくる楕円は、聖母の顔や髪の生え際の形と響き合い、うつむく頭の傾きは右手の曲線に呼応する。この右へのわずかな傾きだけが、三角形の体の左右対称を崩している。鮮やかな青の衣でいっそう力強くなったその形は、静けさと落ち着きを生み、画面の錨となっている。背後の小さな畑では牛が頭をこすり合わせ、腕を後ろに組んだ牧人が歩いている。聖母の左では蛇が鶴をおびやかし、鶴は驚いて翼を広げる。この細部はローマの詩人ウェルギリウスの名高い牧歌にさかのぼるとされ、教養ある顧客に向けた文学的な引用で、蛇が象徴する悪と善の対比を示すのかもしれない。葉を落としたままの木には、死の不吉な象徴であるハゲワシがとまっている。目を閉じ手足を伸ばした幼子の姿は、当時の人々に、死んだキリストを母の膝に横たえるピエタ(哀悼)の絵を思い起こさせただろう。

技法・様式

館によれば、ベッリーニは、自然の舞台を用いて絵の意味を深めた最初期のイタリアの画家の一人である。静かな聖母は、移ろう風景と対比されている。薄くたなびく雲からふくらんだ雲まで、さまざまな雲の形とその影は変わりやすい天気を感じさせ、ごく小さな黄緑の葉をつけた細いポプラは風にしなるように見える。ベッリーニは、光が物や自然の見え方をどう変えるかを注意深く観察したヤン・ファン・エイクやディルク・ボウツら北方の画家の、ヴェネツィアにあった祭壇画から着想を得たのかもしれない。聖母の右袖から遠くの城の壁まで、触れるものすべてを淡く照らす澄んだ光は、季節が春であることを示している。

来歴

館によれば、誰のために描かれたかは分かっていない。この時代には、見る者に強い感情と霊的な反応を呼び起こす宗教画が強く求められていた。1858年に館がファエンツァのアキッレ・ファリーナから購入した。2018年から2019年にはロンドンとベルリンで開かれた「マンテーニャとベッリーニ」展に出品された。

意義

館によれば、注意深く観察された春の風景は、幼子の死を予感させる姿とは裏腹に希望を感じさせる。春は自然がよみがえる季節であり、キリストが死から復活した復活祭の季節でもあるからである。聖なる人物を見覚えのある風景の中に置くことで、ベッリーニは見る者が聖母子をより身近に感じ、個人的に深く向き合えるようにした。同じ画家の作品には、同館の《総督レオナルド・ロレダンの肖像》もある。