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《老女》

La vecchia
《老女》ジョルジョーネ
Wikimedia Commons / アカデミア美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ジョルジョーネ
制作年
1506–1508年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
68 × 59 cm
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欄干の向こうの暗がりから、白い頭巾をかぶった老いた女がこちらを見つめる。口を少し開き、胸に当てた右手には「COL TEMPO(時とともに)」と書かれた紙片を持つ。

概要

《老女》は、ヴェネツィアの画家ジョルジョーネが描いた肖像画で、ヴェネツィアのアカデミア美術館が所蔵する。館の記録では縦68センチ、横59センチのカンヴァスで、目録番号は272、第VIII室に展示されている。館は本作を、数が少なく問題も多いジョルジョーネの作品群のなかで、まったく揺るがない要となる作品とする。日本語版ウィキペディアは、1506年から1508年ごろにカンヴァスに油彩で描かれたとし、いまも当初の額に収められたまま展示されていると記す。

画面の読み解き

館の解説によれば、画面には、重ねてきた歳月を刻んだ年老いた女が半身で描かれ、欄干の向こうの暗がりから浮かび上がる。身なりは質素で、頭の上を覆う頭巾からはまばらな髪がほつれ出て、しわの寄った耳がのぞく。肩には縁のほつれた肩掛けを掛け、その明るい色が、藤色の服の下の肌着の色と響き合う。その装いと家庭的な様子から、乳母を描いたものとみる研究者もいる。乳母は、経験、知恵、慎み、よいしつけを体現する存在だった。女は深いしわの刻まれた顔で、外へ鋭いまなざしを向ける。不ぞろいな歯の口は何かを言おうとして開き、胸の心臓のあたりに当てた右手は、手首の折れ目に「CoL TeMPo(時とともに)」と書かれた紙片をはさむ。

技法・様式

館によれば、女は深く内にこもった瞬間にとらえられ、見る者と親密に語り合うように描かれている。見る者は、この姿の前で思いをめぐらせ、自らを映して心を通わせるよう誘われる。日本語版ウィキペディアは、この写実的な老女の姿が、それまでのジョルジョーネの瞑想的で理想化された人物とは明らかに異なり、画家の晩年の新しい展開を示すとする。同じ記事によれば、レオナルド・ダ・ヴィンチの《最後の晩餐》の聖フィリポとの類似が指摘され、北方のリアリズムの影響も考えられる。アルブレヒト・デューラーが2度目のヴェネツィア滞在中の1507年に描いた《貪欲》(ウィーン美術史美術館)と結びつける研究者もいる。

来歴

館によれば、本作は、少なくとも1601年まで、《テンペスタ》などジョルジョーネのほかの真筆とともにヴェンドラミン家の収集にあった。16世紀には、教養の深さで同時代の人々に称えられたガブリエーレ・ヴェンドラミンが、ヴェネツィアのサンタ・フォスカの館に集めた収集に属していた。古い目録には、「ゾルゾン(ジョルジョーネ)の母の肖像」とも「年老いた女の絵」とも記されている。その後、商人クリストフォロ・オルセッティが手に入れて1664年の遺言に記し、息子ジョヴァンニ・バッティスタに受け継がれた。時期は分からないがのちにマンフリン家の収集に移り、1856年にほかの重要な絵とともにイタリア国家が購入した。日本語版ウィキペディアによれば、1569年のヴェンドラミン家の目録には、本作に男性の肖像を描いた覆いが付いていたと記されている。

意義

館によれば、光と影のあいだに手と反対の向きに広がる紙片の銘は、時の流れが人にもたらす変化について考えさせる。その言葉は、時の破壊する力や体の朽ちやすさ、地上のものの束の間を思い起こさせるメメント・モリとも、人が移ろう情念から解き放たれて神への愛だけを求めるようになる老年への賛美とも読める。館は、手の身ぶりが後者を示唆するようにみえるとし、銘がいまでは読み解きにくいものの、注文主には明快な意味を伝えていたはずだと述べる。日本語版ウィキペディアは、本作をヴァニタスを超える意味を含みうる、老いと時の経過の寓意とみる。