《エスパダの衣装を着けたヴィクトリーヌ・ムーラン》
- 作者
- エドゥアール・マネ
- 制作年
- 1862年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 165.1 × 127.6 cm
- 所蔵
- メトロポリタン美術館
- 時代
- 写実・印象派
- 流派
- 写実主義
黒い帽子と黒い上着、膝丈の黒いズボンを着けた若い女が、右手に剣を掲げ、左手で桃色のケープを広げてこちらを見る。足もとは茶色の短靴。奥の闘牛場では、馬に乗った男が槍で牛に向かっている。
概要
《エスパダの衣装を着けたヴィクトリーヌ・ムーラン》は、エドゥアール・マネが1862年に描いた油彩画で、ニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵する。縦165.1センチ、横127.6センチのキャンバスで、左下に「éd. Manet. / 1862」と署名と年記がある。モデルは、マネが好んで描いたヴィクトリーヌ・ムーラン(1844〜1927年)。題の「エスパダ」は、牛にとどめを刺す闘牛士を指す。
画面の読み解き
所蔵館によれば、マネはヴィクトリーヌを男の闘牛士の姿で描き、そのポーズはルネサンスの版画から借りた。彼女の靴は闘牛には向かず、ひるがえす桃色のケープも色が正しくないが、彼女は堂々と役を演じきっている。館の日本語の解説は、仮装舞踏会のために衣装を着てポーズをとっているかのようだ、と述べる。背景には、闘牛士の妙技をたたえたゴヤの版画集《闘牛技(ラ・タウロマキア)》の一場面が写されている。
技法・様式
人物は、闘牛場の明るい砂の上に黒い衣装の大きな形として置かれ、奥の騎馬の闘牛士や見物の男たちはずっと小さく描かれている。所蔵館によれば、本作が1863年の落選展に出たとき、ある評者は「マネはスペインを愛し、もっとも好きな巨匠はゴヤのようだ。彼はその鮮やかで対照的な色彩と、自由で熱のこもった筆づかいをまねている」と書いた。
来歴
館の『Splendid Legacy: The Havemeyer Collection』(1993年)の巻末目録によれば、画商デュラン=リュエルが1872年1月に画家から3,000フランで買い、1874年2月にジャン=バティスト・フォールが5,000フランで買った。1898年12月にデュラン=リュエルが45,000フランで買い戻し、同月、ニューヨークのH・O・ハヴマイヤー夫妻が15,000ドルで買った。1929年にハヴマイヤー夫人の遺贈で館に入った。出品は1863年の落選展、1867年のマネの個展、1884年の回顧展。
意義
所蔵館の日本語の解説によれば、マネは1863年、官展のサロンに落ちた作品を集めた落選展に、《草上の昼食》、《マホに扮する若者》(メトロポリタン美術館)と本作を3部作として出した。同じ時期のヴィクトリーヌは《オランピア》の裸婦のモデルも務め、のちの《鉄道》にも描かれた。スペイン風の衣装をまとった人物は、マネの初期の作品にくり返し現れる。