《鉄道》
- 作者
- エドゥアール・マネ
- 制作年
- 1873年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 93.3 × 111.5 cm
- 所蔵
- ワシントン・ナショナル・ギャラリー (1956.10.1)
- 時代
- 写実・印象派
- 流派
- 写実主義
黒い鉄の柵の前で、紺の服の女性が膝に本と子犬をのせて腰かけ、まっすぐこちらを見る。その隣では、青い大きなリボンの白い服の少女が柵を握り、白い蒸気に包まれた線路の方を向いている。
概要
《鉄道》(仏: Le Chemin de fer)は、フランスの画家エドゥアール・マネが1873年に描いた油彩画で、ワシントン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。縦93.3センチ、横111.5センチのキャンバスで、右下に「Manet / 1873」の署名と年記がある。所蔵館によれば、舞台は当時パリで最も大きく、最も混み合っていたサン=ラザール駅だが、駅そのものは画面に姿を見せない。
画面の読み解き
所蔵館によれば、この駅を描く絵ではふつう主役になる鉄道旅行や産業の進歩は、ここでは女性と子どもを描いた風俗画の「ほとんど見えない背景」にすぎない。二人は鉄の柵の手前の狭い場所にいて、通り過ぎた列車の蒸気が背後をなかば覆っている。女性はマネが1860年代に最も好んだモデルのヴィクトリーヌ・ムーラン(《エスパダの衣装を着けたヴィクトリーヌ・ムーラン》にも描かれた)で、子どもは、マネに庭を使わせた画家の娘だった。二人は服装も髪型も姿勢も対照的で、少女は立って列車の方を見つめ、女性は座ってまっすぐこちらを見る。女性の膝には、開いた本と眠る子犬がのっている。
技法・様式
画面の右下には、柵のそばに置かれた葡萄の房が描かれている。女性の紺の服と少女の白い服、青いリボンの色の対比が、黒い柵の縦の線と、蒸気の白い広がりに重なる。所蔵館によれば、マネは印象派のグループに正式に加わることはなかったが、近代の生活を主題とするこの絵と、ゆるやかで抽象的な筆の運びには、印象派の影響が表れている。
来歴
所蔵館の記録によれば、画家からパリのジャン=バティスト・フォールの手に渡り、1881年頃に画商デュラン=リュエルに売られた。1898年にニューヨークのH・O・ハヴマイヤーと妻ルイジーンが購入し、息子ホレス・ハヴマイヤーが相続した。1956年、母ルイジーンを記念するホレスの寄贈として同館に入った。現在は同館の西館の第89室に展示されている。
意義
所蔵館によれば、マネは1874年のサロンに4点を出品し、入選した2点のうちの1点が本作だった。批評家たちは、仕上がっていないように見える描き方と、駅のあいまいな描写を批判した。同館の記録によれば、本作は1884年のマネの回顧展にも出品され、1982年の「マネと近代のパリ」展や、1998年にオルセー美術館と同館で開かれた「マネ、モネ、サン=ラザール駅」展などで取り上げられてきた。