《カルロス4世の家族》
薄暗い広間に王家の人々が横一列に並ぶ。中央では白と金のドレスの王妃が幼い王子の手を取り、その右に勲章を連ねた国王が立つ。左端の奥の暗がりでは、大きなキャンバスに向かう画家がこちらを見ている。
概要
《カルロス4世の家族》(西: La familia de Carlos IV)は、スペインの画家フランシスコ・デ・ゴヤが1800年に描いた油彩の集団肖像画で、プラド美術館が所蔵する。縦280センチ、横336センチの大きなキャンバスに、国王カルロス4世の一家13人を描く。所蔵館によれば、ゴヤは首席宮廷画家に任じられた直後の1800年の春から夏にかけて、アランフエスとマドリードで本作を描き、人物一人ひとりの個性を描き分ける腕前を示した。
画面の読み解き
所蔵館によれば、中央に王妃マリア・ルイサ・デ・パルマと国王カルロス4世が立ち、王妃のそばには末の王子フランシスコ・デ・パウラと王女マリア・イサベルがいる。左の一団には、青い服の皇太子(のちのフェルナンド7世)、王位継承第2位の王子カルロス・マリア・イシドロ、国王の姉マリア・ホセファ、身元の分からない若い女性が並ぶ。右には国王の弟アントニオ・パスクアル、横顔を見せる長女でのちのポルトガル王妃カルロタ・ホアキナ、息子カルロス・ルイスを抱く王女マリア・ルイサと、その夫でのちのエトルリア王ルイス・デ・ボルボンがいる。館の百科事典によれば、左奥の暗がりで大きなキャンバスに向かうのはゴヤ自身で、ほかの人物と同じ正確さで描かれている。所蔵館は、最新の流行の衣装や、宮廷宝石商ショピノの作とみられる宝飾、カルロス3世勲章と新設のマリア・ルイサ勲章の綬、金羊毛勲章などの丁寧な描写も指摘する。
技法・様式
所蔵館は、本作の先例として、同館が所蔵するルイ=ミシェル・ヴァン・ローの《フェリペ5世の家族》とディエゴ・ベラスケスの《ラス・メニーナス》を挙げる。館の百科事典の項目(美術史家フレッド・リクト執筆)は、王妃を中心に置く配置、背後の2枚の大きな絵、画架の前に立つ画家という点で本作が《ラス・メニーナス》の構成を受け継ぐ一方、奥の開いた扉と国王夫妻を映す鏡を省いたため、空間が閉ざされたものになったと論じる。所蔵館は、調和がとれて明快でありながら複雑な構図と、人物どうしの微妙な違いの描き分けに、ゴヤの技量と人を見抜く力が表れているとする。
来歴
所蔵館によれば、1800年にはマドリードの王宮にあり、国王の食堂か宮廷の間に掛けられていたとみられる。1808年には同じ王宮の旧王子寝室に、1814年から1818年には桟敷席へ通じる通路にあった。1824年にはプラド美術館の所蔵品として記録されている。現在は同館の第32室に展示されている。
意義
館の百科事典によれば、本作は1年後に描かれたビセンテ・ロペスの王家の肖像ほどの称賛は受けなかったが、王家が不満を示した形跡もない。所蔵館は本作を、首席宮廷画家となったばかりのゴヤが、王家の人々を一堂に集めた大画面で肖像画家としての力量を示した作品として紹介している。