《聖三位一体の礼拝》
- 作者
- アルブレヒト・デューラー
- 制作年
- 1511年
- 素材
- シナノキ・パネル / 油絵具
- 寸法
- 135 × 123.4 cm
- 所蔵
- ウィーン美術史美術館
- 時代
- ルネサンス
- 流派
- 北方ルネサンス
1511年、ニュルンベルクの商人マットイス・ランダウアーの注文で描かれた祭壇画。天上の聖人から地上の教皇と皇帝、注文主自身まで、選ばれた人々が一堂に会して聖三位一体を礼拝する、デューラー最後の大祭壇画である。
概要
《聖三位一体の礼拝》(独: Allerheiligenbild)は、アルブレヒト・デューラーが1511年にシナノキの板に描いた祭壇画である。ニュルンベルクの商人マットイス・ランダウアーが、自ら創設した慈善施設の礼拝堂のために注文したもので、《ランダウアー祭壇画》とも呼ばれる。天と地の選ばれた人々が聖三位一体を礼拝する場面を一枚の画面に収める。ウィーン美術史美術館が所蔵する。
来歴
ランダウアーは1501年、年老いて働けなくなった職人を収容する「十二人兄弟の家」をニュルンベルクに創設し、1510年からは自らもそこで暮らした。その礼拝堂は三位一体と諸聖人に捧げられており、1508年にデューラーへ祭壇画が注文され、1511年に納められた。館の記録によれば、1585年に皇帝ルドルフ2世が同財団から買い上げ、1780年に宝物庫から絵画館へ移されている。所蔵番号はGG 838。デューラーが意匠を描き、ファイト・シュトースが彫ったとされる額縁はニュルンベルクに残り、現在はゲルマン国立博物館にある。ウィーンでは複製の額が用いられている。
画面の読み解き
中央上部に、金色の外套をまとい帝冠をいただく父なる神が、十字架のキリストを両手で支えて見る者に示す。その上には光の雲と、鳩の姿をとった聖霊がある。左には聖母マリアに導かれた女性の聖人たち、右には洗礼者ヨハネに導かれた旧約の人々が列をなす。その下の地上では、左に教皇を先頭とする聖職者たち、右に神聖ローマ皇帝を先頭とする俗人たちが続く。左端でひざまずき、帽子を取っているのが注文主ランダウアーである。右の甲冑姿の騎士は娘婿ヴィルヘルム・ハラーとされる。画面の下部は湖と丘の広がる風景で、その右隅に、銘板を掲げたデューラー自身がただ一人立っている。
技法・様式
シナノキの板に油彩で、大きさは135×123.4センチ。人物を半円状の層に積み上げる構成は聖アウグスティヌスの『神の国』の思想に基づき、イタリアの大祭壇画に範を求めたものである。一方、一人ひとりの顔や衣の模様、金銀の装飾を細部まで描き分ける密度と、鮮やかな色面を画面全体に散らす配置には、北方の伝統がはっきり表れている。下部の風景は夜明けの光に照らされ、アルブレヒト・アルトドルファーらの風景描写に通じる。銘板には「ニュルンベルクのアルブレヒト・デューラー、処女の出産から1511年に作る」とラテン語で記されている。
意義
デューラーが手がけた最後の大きな祭壇画であり、1505年から1507年のヴェネツィア滞在で学んだ人物の量感と空間の構成を、北方の細密な描写と結びつけた到達点とされる。本体だけでなく、上部に「最後の審判」の浮彫をもつ額縁までを画家が設計した点でも、絵と置かれる場所を一体で考える姿勢を示す。注文主を選ばれた人々の列に加える寄進者像の伝統を、画面の隅に立つ画家自身の姿と署名で締めくくったことも、当時としては際立っていた。