《窓辺の若い男》
- 作者
- ギュスターヴ・カイユボット
- 制作年
- 1876年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 116 × 81 cm
- 所蔵
- J・ポール・ゲティ美術館 (2021.67)
- 時代
- 写実・印象派
暗い背広の若い男が、高い階の部屋の大きく開いた窓の前に、背を向けて立つ。両手をポケットに入れて、日に照らされた通りを見下ろす。下では一人の女性が道を渡ろうとし、右手前には赤い肘掛け椅子がある。
概要
《窓辺の若い男》(仏: Jeune homme à sa fenêtre)は、フランスの画家ギュスターヴ・カイユボットが1876年に描いた油彩画である。縦116センチ、横81センチのキャンバスで、ロサンゼルスのJ・ポール・ゲティ美術館が所蔵する。左下に「G. Caillebotte 1876」の署名がある。所蔵館によれば、画家は本作を肖像ではなく風俗画として、この題で初めて展示した。モデルには弟ルネを用い、舞台は一家が新築したばかりの、パリ8区のリスボン通りとミロメニル通りの角の集合住宅である。
画面の読み解き
所蔵館によれば、暗い背広の若い男が、調度の整った上階の部屋の大きく開いた窓の前に立つ。こちらに背を向け、両足をしっかりと開き、両手をポケットに入れて、高くそろった集合住宅に囲まれた日差しの明るい街路を見下ろす。下では流行の装いの女性がひとり通りを渡ろうとし、何台かの馬車が都会の情景を仕上げる。右手前のふかふかした赤い繻子の肘掛け椅子は、男がしばらくこの窓辺に座っていて、ふと立ち上がったことを思わせる。男の注意は、下の通りを渡る女性に向けられているようにみえる。女性は小さく描かれているが、急な遠近法がその姿を強く枠どるため、見る人の目を引きつけてきた。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館の学芸員スコット・アランは、劇的な光と入念な仕上げ、室内とパリの街路の眺めを見事に結びつけた独創的な構図を挙げ、本作を画家の最も創意に富んだ時期の傑作とする。所蔵館によれば、モネやルノワールの気ままな風景画の美学とはまったく異なる、入念に組み立てられた鋭い輪郭の都市の写実であり、1870年代半ばの最も新しい都市の写実の形だった。のちの写真や映画の重要な展開を何十年も先取りしたとされる。
来歴
所蔵館によれば、画家から贈られたアルベール・クルティエの家に伝わり、パリのギャルリー・ド・レリゼを経て、1951年にウィルデンスタイン商会が買った。1995年6月26日にダラスの収集家エドウィン・L・コックスが購入し、2021年11月11日、ニューヨークのクリスティーズのコックス・コレクションの競売で所蔵館が落札した。同館が初めて手に入れたカイユボットの作品である。所蔵番号は2021.67。
意義
所蔵館によれば、本作は1876年の第2回印象派展に出品され、27歳の画家の公の初登場となった。出品作の中では、名高い《床削り》に次いで批評家の注目を集めた。この展覧会をきっかけに、批評家で作家のエドモン・デュランティは、都市の現代生活を写実的に描くことを強く唱えた画期的な論考「新しい絵画」を書いた。画家の名は挙げていないが、カイユボットの作品が主な手本の一つだったことは明らかである。弟マルシャルを描いた《ピアノを弾く若い男》(アーティゾン美術館)、《昼食》とともに、家族を描いた初期の室内画三点を締めくくる作品とされる。