《闘鶏をする若いギリシャ人》
海を望む泉のほとりで、衣をはだけた娘が腰を下ろし、ひざまずいた裸の若者が茶色の雄鶏を押し出す。黒い雄鶏が飛びかかり、その背後では、横顔の欠けたスフィンクスの像が二人を見下ろしている。
概要
《闘鶏をする若いギリシャ人》(仏: Jeunes Grecs faisant battre des coqs)は、フランスの画家ジャン=レオン・ジェロームが1846年に描いた油彩画である。縦143センチ、横204センチのキャンバスで、パリのオルセー美術館が所蔵する。《闘鶏》(Un combat de coqs)の題でも知られる。所蔵館によれば、画家はローマ賞の選考に落ちた痛手が残る1846年にこの絵に取りかかった。再び失敗するのを恐れて出品をためらったが、師のポール・ドラローシュに励まされて翌1847年のサロンに送り、大きな成功を収めた。
画面の読み解き
所蔵館によれば、描かれているのは、泉のたもとに集まった、体の大部分をあらわにした少年と少女の二人である。左の娘は黄色と白の布の上に腰を下ろし、片手を胸もとに当てて、目を伏せて鶏を見る。右の若者は赤と緑の布をまとうだけの裸で、髪に葉の冠をのせてひざまずき、片手で茶色の雄鶏を前へ押し出す。黒い雄鶏は翼を広げてそれに飛びかかる。二人の背後には、雷文の帯をめぐらせた石の台があり、その上に横顔の欠けたスフィンクスの像がのる。所蔵館は、二人の若さがこの像と対比され、同じ対比が生い茂る草木と地面の枯れ枝のあいだにも、まもなく一羽が死ぬ二羽の鳥の争いにも見られるとする。左奥には青い海と山並みが開け、左端には鳥かごが置かれ、左下に「J.L. GÉRÔME 1846」の署名と年記がある。
技法・様式
所蔵館は本作をネオ・グレックの様式とし、その特徴を、細部まで仕上げる好み、明るい色調、なめらかな絵肌に見る。オルセー美術館の2010年のジェローム展によれば、ネオ・グレックの集まりは、古代ギリシアの新しい見方に熱中した若い画家たちが1847年にフルリュス通りで顔を合わせるようになったことから、正式な団体としてではなく生まれた。彼らは考古学的な正確さを重んじつつ、風俗画と歴史画を混ぜ合わせたため、相容れない分野を混ぜるものとして批判も受けた。
来歴
所蔵館の来歴によれば、本作は1847年から、画家から買い取ったルー=ラボリーの収集にあり、1872年までは旧姓をラボリーというビュサ伯爵夫人が持っていた。1872年に画家の義父で画商のアドルフ・グピルが未亡人の伯爵夫人から買い、1873年に国がグピルから買い上げてリュクサンブール美術館に入れた。1920年にルーヴル美術館へ移り、1986年にオルセー美術館に移された。所蔵番号はRF 88で、1階の第2室に展示されている。
意義
所蔵館によれば、作品をたたえる声のなかで、画家の醒めた思いに気づいた批評家はまれだった。ボードレールだけがこの絵を批判し、弱く作り物めいていると見て、ジェロームを「尖った者たちの派(エコール・デ・ポワンテュ)」の頭目と呼んだ。人々はむしろ、この《闘鶏》に「素描と躍動と色彩の真の驚異」を見たテオフィル・ゴーティエの評に従った。こうして23歳のジェロームは美術の世界に鮮やかに登場し、数々の栄誉に彩られた公の画家の道を歩みはじめた。