《青衣の女》
- 作者
- ヨハネス・フェルメール
- 制作年
- 1663年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 46.6 × 39.1 cm
- 所蔵
- アムステルダム国立美術館 (アムステルダム市の所蔵品を長期貸出。ファン・デル・ホープ遺贈)
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- オランダ黄金時代の絵画
1663年頃にフェルメールが描いた室内画。光の差す部屋で、青い上着の女性が立ったまま手紙を読んでいる。背後の壁には大きな地図が掛かり、画面はラピスラズリの青と淡い灰色でまとめられている。
概要
《青衣の女》(蘭: Brieflezende vrouw in het blauw)は、ヨハネス・フェルメールが1663年頃に描いた油彩画である。窓からの光が差す部屋で、青い上着の女性が立ったまま手紙を読む姿をとらえる。アムステルダム市の所蔵品で、アムステルダム国立美術館に長く貸し出されて展示されている。オランダ黄金時代の絵画を代表する室内画の一つである。
来歴
19世紀前半、アムステルダムの銀行家で収集家のアドリアーン・ファン・デル・ホープが所有していた。1854年に彼が没すると、その絵画コレクションはアムステルダム市に遺贈される。市の所蔵品は1885年に開館したアムステルダム国立美術館に預けられ、以後、同館で公開されてきた。館の表示は今も「アムステルダム市からの貸出(ファン・デル・ホープ遺贈)」であり、所蔵番号は館の貸出品を示すSK-C-251、市の側ではSA 8335である。2003年から2013年の大改修を経た現在も、同館が持つフェルメール4点の一つとして並んでいる。
画面の読み解き
女性は机の前に立ち、両手で開いた手紙を目の高さに持って読んでいる。机には青い布が掛かり、開いた箱と真珠の首飾り、もう一通の紙が置かれる。手前と右には、青い張り地に真鍮の鋲を打った椅子が二脚。背後の壁には大きな地図が掛かっている。光は左から入っているが、窓そのものは描かれない。ゆったりした青い上着から妊娠を読む解釈もあるが、当時広く着られていた形の上着でもある。なお、フェルメールの室内画のうち、床も天井も部屋の隅も見えないのは本作だけである。
技法・様式
キャンバスに油彩で、大きさは46.6×39.1センチ。画面を占める青は高価なウルトラマリンで、上着だけでなく壁の影や机の布にも用いられ、肌の色は灰色に近く抑えられている。輪郭は硬い線で区切らず、光の中でやわらかくぼかされる。壁の地図は、バルタザール・フロリス・ファン・ベルケンローデが1620年に作り、ウィレム・ブラウが翌年に版を重ねたホラント州と西フリースラントの地図で、《士官と笑う娘》にも色付きの状態で描かれている。人物を壁の前に置き、水平と垂直の線で画面を組み立てる構成は、同じ頃の《真珠の首飾りの女》にも通じる。
意義
手紙を読む女性は17世紀オランダで好まれた主題で、フェルメールも繰り返し描いた。初期の《窓辺で手紙を読む女》(1657〜1659年頃)では、開いた窓、厚いカーテン、果物の皿などが画面を埋めていたが、本作では余分なものが取り除かれ、女性と地図と光だけが残る。手紙の中身も、女性が誰なのかも示されない。物語を説明せず、ある一瞬の静けさだけを差し出すこの構えが、《眠る女》から進んだフェルメール円熟期の特徴である。