《窓辺で手紙を読む女》
- 作者
- ヨハネス・フェルメール
- 制作年
- 1657–1659年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 83 × 64.5 cm
- 所蔵
- アルテ・マイスター絵画館
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- オランダ黄金時代の絵画
開いた窓の前に若い女性が横向きに立ち、両手で持った手紙に目を落とす。手前には絨毯を掛けた机と果物の盛られた鉢があり、右には緑の幕が下がる。奥の壁には弓を持つキューピッドの絵が掛かる。
概要
《窓辺で手紙を読む女》は、オランダ・デルフトの画家ヨハネス・フェルメールが1657年から1659年頃に描いた油彩の風俗画で、ドイツ・ドレスデンのアルテ・マイスター絵画館が所蔵する。館の記録では、キャンバスに油彩で、縦83センチ、横64.5センチ。所蔵番号はGal.-Nr. 1336で、署名は女性の姿と幕の間に痕跡が残るだけである。館によれば、本作は1742年にパリでザクセン選帝侯フリードリヒ・アウグスト2世のコレクションのために購入され、それ以来ドレスデンの絵画館の代表作の一つであり続けてきた。2017年に始まった修復で、後世の上塗りに隠されていた壁の画中画のキューピッドが取り戻され、2021年に描かれた当初の姿で公開された。
画面の読み解き
画面の左では、開け放たれた鉛枠の窓から光が差し込み、上の窓枠には赤い幕が掛かる。その光の中に、黄色の上着を着た若い女性が横向きに立ち、両手に持った手紙を読みふける。窓ガラスにはその顔がうっすらと映る。手前の机には東洋の絨毯が波打つように掛けられ、傾いた染付の鉢から桃や林檎がこぼれる。画面の右端には、棒に吊った緑の幕が引き寄せられている。館によれば、これまでこの絵は、白く塗られた何もない奥の壁を背に、読むことに静かに没頭する若い女性の姿として知られてきた。修復後の奥の壁には、弓と矢、二つの仮面とともに立つキューピッドの絵が掛かっている。キューピッドは右手に立てた弓を持ち、左腕を上げる。足もとの仮面を踏みつけるのは、まことの愛が欺きや偽善に打ち勝つしるしである。館は、同時代の人々にとって、手紙の隠された内容が恋文であることを、これ以上はっきり示す手がかりは考えにくいとしている。
技法・様式
館の報道発表によれば、1979年に撮られたX線写真で、奥の壁に裸のキューピッドの画中画が完全に塗りつぶされていることが分かり、1982年にアンナリーゼ・マイヤー=マインチェルが発表した。以来、研究者たちは、構図に満足しなかったフェルメール自身が塗りつぶしたと考えてきた。しかし2017年からの修復と調査で、X線、赤外線反射法、顕微鏡による観察を行い、ドレスデン造形美術大学の考古計測学研究室で絵具の試料を分析し、アムステルダム国立美術館の協力で画面全体の蛍光X線分析も行った結果、上塗りはフェルメールの手ではなく、画家の死後かなりたってから少なくとも数十年後に加えられたものと確かめられた。館は2018年初め、国際的な専門家委員会の支持を得て上塗りを除くことを決め、修復家クリストフ・シェルツェルが担当した。
来歴
館によれば、本作は1742年にパリで購入されてドレスデンに入り、以後絵画館の主要な作品であり続けた。修復は2021年初めに完了し、本作は同年9月10日から2022年1月2日まで開かれた展覧会「ヨハネス・フェルメール 熟考のとき」の中心として、時代に合わせた黒檀の額に収めて公開された。
意義
絵画館の館長シュテファン・コヤは、フェルメールが本作で自分独自の様式を見いだしたと述べる。本作は、人物、多くは女性が、何かをしている途中でふと手を止め、静かに思いをめぐらす一連の作品の始まりであり、キューピッドの回復によって、表面的な恋愛の文脈を超えた、まことの愛の本質についての画家の意図が明らかになったという。展覧会の担当学芸員ウータ・ナイトハルトは、上塗りが除かれた画面の縁が奇妙に未完成に見えることから、フェルメールは実際の木の枠で覆うつもりだったのかもしれないとし、だまし絵の幕を描いたデルフトの教会内部画家や、ピーテル・デ・ホーホの入り組んだ室内画を思い起こさせると述べている。