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《キューピッドによって結ばれるマルスとヴィーナス》

Mars and Venus United by Love
《キューピッドによって結ばれるマルスとヴィーナス》パオロ・ヴェロネーゼ
Wikimedia Commons / メトロポリタン美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
パオロ・ヴェロネーゼ
制作年
1570–1579年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
205.7 × 161 cm

庭の大理石の台座に、金の鎧に青いマントのマルスが腰かけ、裸のヴィーナスがその肩を抱く。足もとでは幼いキューピッドがリボンで二人の脚を結び、右ではもう一人が剣を手に、白い軍馬を押しとどめている。

概要

《キューピッドによって結ばれるマルスとヴィーナス》は、ヴェネツィアの画家パオロ・ヴェロネーゼが1570年代に描いた油彩の神話画で、ニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵する。館の記録では、キャンバスに油彩で、縦205.7センチ、横161センチ。所蔵番号は10.189で、1910年にジョン・スチュワート・ケネディ基金で購入され、第608室に展示されている。館の学芸員キース・クリスチャンセンは本作を「堂々とした縦長の絵」と呼んでいる。

画面の読み解き

館の解説によれば、戦いの神マルスと愛の女神ヴィーナスの恋を、おせっかいな二人のキューピッドがあと押しする。一人は恋人たちを結びつけ、もう一人の共謀者はマルスの軍馬を抑えている。日本語版ウィキペディアによれば、軍馬を降りたマルスは兜を脱ぎ、金の鎧と青いマントをまとったまま大理石の台座に腰かけ、ヴィーナスは白い肌着を脱いで背後の壁に掛けている。ヴィーナスは左手でマルスの肩を抱き、右手を自らの胸に当て、その胸から乳が流れ出る。背景には、サテュロスの人像柱が支える壁がそびえる。クリスチャンセンは、女神が裸であるのに対しマルスが衣を着て鎧をまとっている対比を指摘し、そこに「相反するものの結びつきから生まれる調和」というメッセージを読む。

技法・様式

館は、ヴィーナスの胸から乳が流れ、マルスが武装を解かれる姿によって、本作が愛のもつ文明化し育む力をたたえているとする。そして、すぐれた色彩画家ヴェロネーゼは、豊かな色づかいによって主題の官能性を高めたという。日本語版ウィキペディアによれば、近年のX線による調査で、ヴェロネーゼが制作の途中で多くの変更を加えたことが分かっている。もとはヴィーナスの顔が右を向いてマルスを見下ろしていたが、左向きに改められ、肩や首、腕や脚の位置も細かく調整された。左下のキューピッドは、すでに描かれていた布の上に後から描き加えられた。

来歴

館の解説によれば、本作は皇帝マクシミリアン2世の注文による可能性があり、1621年までには、プラハで皇帝ルドルフ2世が画家のほかの神話画とともに所有していた。クリスチャンセンも、ルドルフ2世が本作を、同じヴェロネーゼの作で女性の裸体が目立つ、現在ニューヨークのフリック・コレクションにある2点とともに持っていたと記している。日本語版ウィキペディアによれば、絵は1648年にプラハがスウェーデン軍に略奪された際にスウェーデンへ渡り、女王クリスティーナ、ローマのオデスカルキ家、パリのオルレアン・コレクションを経て、1798年にイギリスの貴族たちの手に移った。その後イギリスの複数の所有者を経て、1910年に館が購入した。

意義

館は、本作のような作品が、のちのベラスケスやジャンバッティスタ・ティエポロといった画家たちに長く影響を与えたとしている。日本語版ウィキペディアは本作を、ヴェロネーゼを代表するヴィーナスの絵であり、1570年代の作品の中でも最大級のものの一つとする。