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《泉》

La Source
《泉》ドミニク・アングル
Wikimedia Commons / オルセー美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ドミニク・アングル
制作年
1820–1856年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
163 × 80 cm

岩のくぼみを背に、裸の若い娘がすらりと立ち、肩にかついだ壺から水を注ぐ。流れ落ちた水は足もとの泉に落ち、そのほとりには草花が咲く。娘の体は大理石の像のように静かにたたずんでいる。

概要

《泉》(仏: La Source)は、フランスの画家ドミニク・アングルが1856年に完成させた油彩画である。縦163センチ、横80センチの縦長のキャンバスで、パリのオルセー美術館が所蔵する。湧き出る泉を、壺を肩にかついだ裸の娘の姿で表した寓意画である。所蔵館によれば、1820年頃に描き始められ、完成したのは36年後の1856年だった。仕上げには、アングルの弟子ポール・バルズとアレクサンドル・デゴッフが加わり、館は二人を制作に当たった画家として記録している。

画面の読み解き

縦長の画面の中央に、裸の娘が正面を向いて立つ。わずかに首をかしげて腰をひねり、右腕を頭上に回して左肩にのせた壺を支え、左手で壺の口を傾けて水を注ぐ。流れ落ちる水は足もとの泉に落ち、左下には黄色い花をつけた草が伸び、右下にも小さな花が咲く。背後は暗い岩のくぼみで、上からは木の葉がかぶさる。所蔵館によれば、縦長の画面の中で全身の裸婦は壁龕(へきがん)にはめ込まれたように置かれ、そのポーズと相まって、画面に大理石のような不動の静けさを与えている。

技法・様式

所蔵館によれば、娘の描き方には彫刻の表現の影響がはっきり見られ、それはアングルが率いた新古典主義にとって、古代の彫刻が大きな手本だったことを思えば驚くにあたらない。体の輪郭に沿って筆触は輝きを抑え、ビロードのように柔らかくなり、肌の肌理と肉体の感触を思わせる。線と素描を重んじる点で師ジャック=ルイ・ダヴィッドの教えに忠実でありながら、画家はその枠を越えた。引き伸ばされた体はうねる線の戯れのための口実となり、肉づけは驚くほど切りつめられ、奥行きのなさが人物の姿を際立たせる。大画面の制作で弟子が手を貸すのは当時よく行われたことで、文化省の作品目録によれば、二人は小道具と背景を受け持った。

来歴

文化省の作品目録によれば、アングルはフィレンツェで本作に取りかかり、パリで完成させた。左下に「J. Ingres 1856」の署名と年記がある。最初の持ち主は収集家のデュシャテル伯爵で、所蔵館によれば、伯爵の邸では「泉の妖精がいっそう本物らしく見えるように」、絵の周りを大きな植物や水辺の花で囲んでいた。1878年、伯爵夫人の遺贈で国の所有となり、所蔵番号はRF 219。現在はオルセー美術館の1階の第1室に展示されている。

意義

所蔵館によれば、当時の批評家たちは、理想の美を形づくろうとする画家の野心と、そこに含まれる写実とをめぐって議論した。作家テオフィル・ゴーティエは、これほどしなやかで、みずみずしく、生命と光に満ちた肌が、恥じらいを帯びた裸で人の目に差し出されたことはなかったと述べ、「今度ばかりは理想がだまし絵になった」と、現実と理想の総合を言い表した。所蔵館は、アングルの新しい様式が、のちのドガやピカソのような画家たちへの道を開いたとする。