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《羊飼いの少女》

《羊飼いの少女》ウィリアム・アドルフ・ブグロー
Wikimedia Commons / フィルブルック美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ウィリアム・アドルフ・ブグロー
制作年
1889年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
159.4 × 94 cm
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棒を肩に渡した素足の少女が、牧草地の小道に立ってこちらを見ている。霧のかかった谷では赤茶の牛が草を食む。筆跡をまったく残さない仕上げで、農村の娘が等身大に近い大きさで立ち上がる。

概要

《羊飼いの少女》(仏: Pastourelle)は、ウィリアム・アドルフ・ブグローが1889年に描いた油彩画である。縦159.4センチ、横94センチ。アメリカ・オクラホマ州タルサのフィルブルック美術館が所蔵する。ブグローは1881年にも同じ題の一点を描いており、区別のために原題「パストゥレル」が添えられることがある。アカデミック美術の完成期を示す一点である。

画面の読み解き

牧草地の小道に、少女がひとりで立つ。両肩に渡した細い棒へ左右の腕を掛け、右手は棒の端を握り、左手は力を抜いて垂れている。白い麻のブラウスは袖をまくり上げ、その上に茶と黄の格子のベストを重ね、腰には濃い茶の布を巻く。膝下まであるオリーブ色のスカートの裾から、土のついた素足がのぞく。背景は左が開けた谷で、霧の中に赤茶の牛が数頭、草を食んでいる。右手前には赤い実をつけた茂みと白い小花が置かれ、遠景の山は青くかすむ。少女の視線はまっすぐ見る者へ向けられ、口もとは結ばれている。画面の左下に「W-BOUGUEREAU-1889」の署名がある。

技法・様式

エコール・デ・ボザールで教えられたデッサンを土台に、薄い絵具を重ねて筆跡を消す仕上げが徹底されている。肌は陶器のようになめらかで、布の織り目や髪の一本一本まで描き分けられる一方、絵具の盛り上がりは画面のどこにも残らない。縦長の画面に人物を等身大に近く置く構図は、本来は歴史画や肖像画に与えられる大きさであり、それを農村の娘に用いている点に特徴がある。背景は輪郭をゆるめ、空気遠近法で青くかすませて退かせ、人物の輪郭だけを硬く結ぶ。筆触を見せる方向へ進んだ同時代の印象派とは、正反対の道である。

来歴

制作直後の経緯は詳しく知られていないが、20世紀に入って作品はアメリカへ渡った。オクラホマ州カウシティで夫とともに油田を掘り当てたローラ・A・クラッブが集めた絵画群に入り、自宅に収まらなくなった収集品は一家の経営するクラッブ・ハウス・ホテルに掛けられていたという。クラッブは1947年、150点の絵画をタルサのフィルブルック美術館へ寄贈する。本作もその一点で、所蔵番号は1947.8.82、クレジットは「ローラ・A・クラッブ寄贈」である。

意義

19世紀の終わりのフランスで、ブグローはサロンの頂点に立ちながら、同時代の前衛からは古い様式の代表と見なされた。本作のような農村の娘の像は、理想化されすぎているという批判を受けつつアメリカの収集家に強く支持され、その多くが大西洋を渡っている。フィルブルック美術館では本作が館を代表する一点とされ、2006年に同館が企画したブグローとアメリカ人の弟子たちをめぐる巡回展でも中心に据えられた。20世紀末からの19世紀アカデミズムの再評価とともに、こうした作品も改めて位置づけられつつある。