《七つの大罪と四終》
黒い地の中央に、目のような大きな円が浮かぶ。瞳の位置には傷を見せるキリストが立ち、そのまわりの七つの区画で、酒場の喧嘩や大食の家族など、罪にふける人々が描かれる。四隅の小さな円には、死の床や地獄の光景が見える。
概要
《七つの大罪と四終》(西: Mesa de los pecados capitales)は、ネーデルラントの画家ヒエロニムス・ボスが1505年から1510年頃に描いた油彩の板絵である。縦119.5センチ、横139.5センチのポプラ材の板に、七つの大罪と、死・最後の審判・地獄・天国の「四終」を描く。スペイン国有財産庁がエル・エスコリアル修道院の所蔵品としてプラド美術館に長期寄託している。
画面の読み解き
所蔵館によれば、ボスは五重の同心円で教えを表した。中央の大きな円は巨大な目か凹面鏡のようで、瞳にあたる最も内側の円には、脇腹の傷を見せるキリストが立ち、「用心せよ、用心せよ、主は見ておられる」と記される。そこから金色の光が放たれ、外側の輪は七つの区画に分かれて、それぞれに罪の名が書かれる。伝統的に傲慢が占める一番下の位置には憤怒が置かれ、酒場での酔った喧嘩として描かれる。そこから左回りに、悪魔の差し出す鏡で身を飾る女の傲慢、天幕の中の恋人たちの色欲、祈りもせず眠る男の怠惰、むさぼり食う家族の大食、賄賂を受け取る役人の貪欲、金持ちの鷹をうらやむ夫婦の嫉妬が続く。上下の帯には、罪の報いを戒める申命記のラテン語の言葉が書かれている。四隅の小さな円は、左上が死、右上が最後の審判、左下が地獄、右下が聖ペテロが魂を迎える天国である。
技法・様式
ポプラ材の板に油彩で描かれる。所蔵館によれば、ポプラ材は年輪年代法で年代を測れないが、様式と衣装、とくに帽子の形から、画家の晩年の1505年から1510年頃とみられる。フェリペ・デ・ゲバラの『絵画注解』(1560年頃執筆)の一節を根拠に、ボスの作であることを疑う研究者もいた。しかし同館は、調査で見つかった下描きの特徴が《乾草車》と共通すること、構図がきわめて独創的であること、後から加えた形跡のない署名があることから、ボスの真作とする。
来歴
所蔵館によれば、最初の持ち主や目的は分かっていない。1560年より前にはスペイン王フェリペ2世の所有となり、王は真作とみなして1574年にエル・エスコリアル修道院へ送り、亡くなるまで私室に掛けた。1936年までエル・エスコリアルにあり、同年10月26日にプラド美術館へ預けられ、1943年3月2日の政令で長期寄託となった。所蔵番号は P002822。現在は第056A室に展示されている。
意義
所蔵館によれば、本作は神の遍在と人間の自由、そして罪の報いを結びつけて示す。ボスは、神のすべてを見通す目の下で、さまざまな身分の人々の日常の場面として道徳の教えを描いた。同館は、これほど独創的な構図は名もない追随者には考えにくく、匹敵する創意を持つのはピーテル・ブリューゲル(父)だけだとしている。