《農民の婚宴》
- 作者
- ピーテル・ブリューゲル(父)
- 制作年
- 1567年
- 素材
- オーク板 / 油絵具
- 寸法
- 113 × 164 cm
- 所蔵
- ウィーン美術史美術館
- 時代
- ルネサンス
- 流派
- 北方ルネサンス
納屋に長い食卓が斜めに延び、村人たちが並んで座る。奥の緑の布の前に花嫁が座り、手前では二人の男が外した扉を担架にして粥の皿を運ぶ。左では男が酒を壺に注ぎ、床では赤い帽子の子どもが指をなめる。
概要
《農民の婚宴》(蘭: De boerenbruiloft、独: Bauernhochzeit)は、ピーテル・ブリューゲル(父)が1567年頃に描いたオーク材の板絵である。縦113センチ、横164センチ。ウィーン美術史美術館が所蔵する。納屋を会場にした村の婚礼の宴を描いた作品で、所蔵館は、寓意を持たせずにフランドルの農民の婚礼をありのままに写したものとしている。同じ寸法の《農民の踊り》とともに、画家の晩年を代表する北方ルネサンスの風俗画である。
画面の読み解き
黄土色の壁に囲まれた納屋に、長い食卓が左奥から右手前へ斜めに延び、村人たちが並んで座る。奥の緑の布の前で、手を組んで座るのが花嫁で、その頭上には紙の冠が掛けられている。所蔵館によれば、フランドルの慣習では花婿は宴の席に着かなかった。手前では、青い上着に白い前掛けの男と赤い上着の男が、蝶番から外した扉を担架にして粥の皿を運び、食卓の男がそれを受け取って回す。左手前では、男が大きな水差しから酒を壺に注ぎ、足もとの籠には空の壺が積まれる。その前の床には、大きな赤い帽子の子どもが座り込み、皿を抱えて指をなめている。左にはバグパイプ吹きが二人立ち、赤い服の一人は運ばれていく料理を目で追う。入口からは、まだ人々が押し寄せてくる。右の壁には熊手を添えた麦の束が掛かり、右端には、剣を帯びて犬を連れた領主が座って、フランチェスコ会の修道士と言葉を交わす。所蔵館は、ベレー帽をかぶった公証人の姿も見分けられるとする。
技法・様式
所蔵館は、一瞬を写し取ったように見える画面が、実は注意深く組み立てられていると指摘する。食卓の斜めの線が見る者の目を奥の花嫁へ導き、手前には運び手や酒を注ぐ男、床の子どもといった大きな人物が並ぶ。赤、白、黒の衣が画面のあちこちに散って、宴のにぎわいにリズムを与える。所蔵館は、扉に載せて運ばれる粥がいかにも質素であること、そして運び手の姿勢と歩みが強く印象に残ることを挙げている。高い視点から小さな人物を見渡した初期の作品に対し、目の高さに近い視点で人物を大きく描く点に、晩年のブリューゲルの変化が表れている。
来歴
所蔵館によれば、1594年、ブリュッセルにいたエルンスト大公が入手し、のちにレオポルト・ヴィルヘルム大公の収集に入った。板は下端が切り詰められたのち、あらためて5センチ継ぎ足されており、継ぎ足しを含めると縦114センチになる。所蔵番号は絵画館1027番で、第10室に展示されている。
意義
1604年に画家列伝を著したカレル・ファン・マンデルは、ブリューゲルが農民の身なりで祭りや婚礼に紛れ込み、人々の姿を観察したと伝えている。本作は《農民の踊り》とともに、「農民のブリューゲル」と呼ばれる画家の像を形づくった作品である。村の婚礼を大きな画面の主題とし、花嫁や客、給仕、楽師のそれぞれの振る舞いを細かく描き分けた本作は、のちのフランドルとオランダの農民風俗画の手本となった。