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《キリストの降誕》

The Nativity
《キリストの降誕》ピエロ・デラ・フランチェスカ
Wikimedia Commons / ロンドン・ナショナル・ギャラリー / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ピエロ・デラ・フランチェスカ
制作年
1480–1484年
素材
板(おそらくポプラ材) / 油絵具
寸法
124.4 × 122.6 cm
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崩れかけた小屋の前で、聖母がひざまずき、青い外套の上に横たわる幼子を拝む。左では天使たちが歌い、楽器を奏でる。右には鞍に座るヨセフと二人の羊飼いがいて、ロバと牛が並び、背後に丘と川、町が広がる。

概要

《キリストの降誕》は、イタリアの画家ピエロ・デラ・フランチェスカが1480年代前半に描いた油彩の板絵で、ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。館の記録では、おそらくポプラ材の板に描かれ、縦124.4センチ、横122.6センチ。所蔵番号はNG908で、第66室に展示されている。館によれば、ピエロの最後の作品の一つで、画家は故郷ボルゴ・サン・セポルクロの一族の館のために描き、本作ははじめ主寝室に掛けられて、1825年まで館にあった。

画面の読み解き

館の解説によれば、ピエロは、キリストの降誕を、故郷に近いトスカーナの田園の丘の上に現れる奇跡の幻として描いた。場面は、15世紀に広く読まれた中世末の神秘家、スウェーデンの聖ブリギッタ(1303年頃〜1373年)の有名な記述にもとづく。聖母は、崩れかけた小屋の前で生まれたばかりの子の前にひざまずいて拝み、身につけていたものすべてである深い青の外套を差し出して、幼子の裸の肌を地面から守っている。夫ヨセフはロバの鞍に腰掛け、その姿勢は、少年が足のとげを抜く古代の名高い彫像「とげを抜く少年」から取られている。その後ろの二人の羊飼いのうち、一人は見る者に目を向けながら、屋根の穴から小屋の石壁に差し込む神の光を指さし、もう一人はそのしぐさを目で追う。いななくロバもその光に気づき、牛は頭を下げて幼子を見つめる。古代の彫刻を思わせるゆるやかな衣の天使たちは、歌い、楽器を奏でて、キリストにおける神の受肉をたたえる。

技法・様式

館によれば、ピエロは人物を、故郷を思わせる静かなトスカーナの風景の中に置いた。左には木々の点在するなだらかな丘のあいだを川が蛇行し、右には家々の屋根と教会が見える。前景の岩と草のあいだには3羽のヒワがとまり、小屋の屋根にはカササギがいる。こうした細部への注意が場面の写実を高め、荒れた小屋とむき出しの岩場は、キリストのつつましい誕生を強調する。聖母の白い肌と金髪、薄いヴェールはルネサンスの美の理想に従い、髪と襟元は真珠で飾られて、つつましさと威厳を併せ持つ。調和のとれた構図は、画家に特有の冷たい色調と深い明るさに満ちる。油絵具を用いたため、卵テンペラで描いた《キリストの洗礼》よりも色が濃く見える。

来歴

館の来歴によれば、本作は画家の兄弟マルコの子孫のもとにサン・セポルクロで伝わったとみられ、1825年にマリーニ=フランチェスキ家のジュゼッペの所有として初めて記録される。彼は本作をフィレンツェのウフィツィに預け、その後も売りに出された。1861年にフィレンツェで本作を見たイーストレイクは自ら買おうとしたが、ロンドンの収集家アレクサンダー・バーカーに先を越された。館は1874年6月6日のバーカーの売り立てで購入した。

意義

館によれば、一族のもとにあった間に、絵の表面の一部は過度の洗浄でひどく傷み、そのため未完成の作品と考える人もいた。しかし2022年に終えた修復と保存処置により、損傷した部分の読み取りやすさが増し、構図の空間の感覚、小屋の壁に差す神の光、出来事の奇跡の性格を強めるために意図して省かれた人物の影など、ピエロのもとの意図の多くがよみがえった。聖ブリギッタの幻を見慣れた故郷の風景の中に置くことで、ピエロはキリストの誕生という非凡な出来事を、自らの世界へじかに引き寄せている。聖ブリギッタの幻視に従って聖母を描いた降誕の絵には、ネーデルラントで15世紀前半に描かれた、ディジョン美術館の《キリスト降誕》もある。