《聖母の結婚》
澄んだ空の下、石畳の広場の奥に、丸屋根をいただく多角形の神殿が立つ。手前では大祭司が二人の手を取り、花の咲いた枝を持つヨセフが、マリアの指に指輪をはめようとしている。
概要
《聖母の結婚》(伊: Sposalizio della Vergine)は、イタリアの画家ラファエロ・サンティが1504年に描いた油彩の祭壇画である。縦170センチ、横118センチの板絵で、上端は半円形に閉じる。マリアとヨセフの婚礼を描き、ブレラ美術館が所蔵する。当時およそ20歳の画家が、師とされるペルジーノの同じ主題の祭壇画をもとに描いた。
画面の読み解き
所蔵館の解説によれば、主題は外典福音書と『黄金伝説』が伝える場面である。神のお告げを受けたエルサレムの大祭司が、マリアに求婚する男たちに枯れ枝を持って神殿へ来させたところ、ヨセフの枝だけが花を咲かせた。画面は、大祭司の前でマリアとヨセフが指輪を交わす瞬間を描く。中央の大祭司が二人の手首を取り、5人の娘と5人の求婚者が左右に分かれて並ぶ。ヨセフは一人だけ裸足で、左手に花の咲いた枝を持つ。右手前の求婚者は、選ばれなかった自分の枝を膝に当てて折ろうとしている。奥の広場には、短い階段の上に十六角形の神殿が立ち、中央の扉と裏側の扉を通して向こうの景色が見える。神殿の柱廊のアーチの上には、「RAPHAEL URBINAS」の署名とローマ数字の年記がある。
技法・様式
板に油彩で描かれる。所蔵館によれば、赤外線反射撮影で、神殿の扉に向かって集まる多くの線が見つかった。透視図法の仕組みを定めるこの線は、ピエロ・デッラ・フランチェスカの『絵画の遠近法について』の教えに従っており、神殿が構図の中心となる。人物は半円形に並び、神殿の凸面の線と釣り合う。建物はきわめて正確に描かれ、木の模型があったのではないかと考える研究者もいる。
来歴
所蔵館の第24室の解説によれば、本作はアルビッツィーニ家の注文で、チッタ・ディ・カステッロのサン・フランチェスコ聖堂の聖ヨセフ礼拝堂のために描かれた。1798年、ナポレオン軍の分遣隊を率いたジュゼッペ・レーキがブレシアへ持ち去り、売買を経て、1806年にブレラ美術アカデミーの書記ジュゼッペ・ボッシが、生まれたばかりの絵画館のために買い取った。現在は第24室に展示されている。
意義
所蔵館によれば、ラファエロは、ペルージャ大聖堂の礼拝堂のためにペルジーノが描いた同じ主題の祭壇画(現在はカーン美術館)から構図と図像を借りた。ペルジーノは要素を正しい透視図法の中に並べただけだったが、ラファエロはすべてを比例の数学的な関係で結び、明快な秩序の中に置いた。同館は、美を幾何学的な表現の抽象的な秩序と考えた画家の考えが、ここにはっきり示されているとする。