クレジット方針 収録範囲について お問い合わせ
作品COLLECTION 画家ARTISTS 流派MOVEMENTS 時代PERIODS 所蔵MUSEUMS 様式史HISTORY 用語集GLOSSARY 検索SEARCH

《接吻》

Der Kuss
《接吻》グスタフ・クリムト
Wikimedia Commons / ベルヴェデーレ美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
グスタフ・クリムト
制作年
1907–1909年
素材
キャンバス / 油絵具・金箔・銀箔・プラチナ箔
寸法
180 × 180 cm
広告

金色の光に包まれて、男が身をかがめ、両手で女の顔を引き寄せて頬に口づける。女は目を閉じ、花の咲く草地の縁にひざまずく。二人の衣は文様で溶け合い、背景には金の粒がきらめく。

概要

《接吻》(独: Der Kuss)は、グスタフ・クリムトが1907年から1909年ごろにかけて描いた作品である。縦180センチ、横180センチの正方形の画布に、油絵具と金箔・銀箔・プラチナ箔を用いる。ウィーンのベルヴェデーレ美術館が所蔵する。1908年の展覧会「クンストシャウ・ウィーン」に「恋人たち」の題で初めて出品され、所蔵館の登録名も「接吻(恋人たち)」である。金を多用したクリムトの「黄金様式」を代表する作品で、アール・ヌーヴォーの時代のウィーンを象徴する作品として知られる。

画面の読み解き

金色の背景の中央に、一組の男女が一つの塊となって立ち上がる。男は身をかがめ、蔦の冠をのせた頭を傾けて、両手で女の顔を包み、その頬に口づける。女は花を編み込んだ赤い髪を肩に流し、目を閉じて顔を仰向け、片腕を男の首に回している。二人は金の衣にくるまれているが、男の衣は黒・白・銀の四角形、女の衣は色とりどりの円と花の文様で埋められ、文様の違いだけが二人を分けている。足もとは花の咲き乱れる草地で、その縁は崖のように切れ落ち、女の素足の指が縁をつかむ。女の足首からは金の蔓が垂れ下がる。背景は金の粒を散らした褐色の地で、右下に「GVSTAV / KLIMT」の署名がある。

技法・様式

所蔵館によれば、人物には金箔・銀箔・プラチナ箔と樹脂を混ぜた油絵具が、背景には真鍮の合金である模造金と金属箔の細片が用いられている。平らな金地と文様の上に、顔と手、足だけを写実的に描き起こす方法は、ビザンティンのモザイクや金工の技を思わせ、1901年の《ユディトI》から続く「黄金様式」の集大成といえる。男の衣の直線的な四角形と、女の衣の曲線的な円や花は、男性と女性の対比として読まれることが多い。所蔵館は、閉じた目と周りの花が親密で夢のような気配を強め、作品を「愛の大いなる寓意」へと高めていると解説する。特定の恋人たちの肖像ではなく、愛そのものを描いた寓意画として見られているのはそのためである。

来歴

1908年の「クンストシャウ・ウィーン」に出品された作品を、同年7月10日にウィーンの近代美術館(モデルネ・ガレリー)の委員会が購入を決め、文部省が当時としては破格の2万5,000クローネで買い上げた。作品は1909年7月22日に正式に同館に引き渡されている。モデルネ・ガレリーはのちのオーストリア・ギャラリーで、現在のベルヴェデーレ美術館にあたる。所蔵番号912。上ベルヴェデーレ宮に展示されている。

意義

クリムトは、分離派を離れた仲間たちとともに1908年のクンストシャウを開き、本作はその場で国に買い上げられた。抱擁と口づけという普遍的な主題を、金と文様による装飾の中に昇華させた画面は、今日、世紀末ウィーンの美術を代表する図像として広く知られている。