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《聖マタイと天使》

San Matteo e l'angelo
《聖マタイと天使》カラヴァッジョ
Wikimedia Commons / サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
カラヴァッジョ
制作年
1602年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
292 × 186 cm
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闇の中、オレンジ色の衣の老いたマタイが机に身を乗り出し、ペンを手に頭上を見上げる。白い布をひるがえして舞い降りた天使が、指を折りながら語りかける。マタイの片膝をのせた腰掛は、段の端から傾きかけている。

概要

《聖マタイと天使》は、カラヴァッジョが1602年に描いた油彩の祭壇画で、ローマのサン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会のコンタレッリ礼拝堂の中央の祭壇に掛けられている。《聖マタイの霊感》とも呼ばれる。キャンバスに油彩で、大きさは縦292センチ、横186センチとされる。礼拝堂の左右の壁を飾る《聖マタイの召命》と《聖マタイの殉教》に続く作品で、教会の公式サイトは、カラヴァッジョがこの傑作によってマタイの連作を完成させたと紹介している。いま祭壇にあるのは、最初の作が退けられたあとに描き直された第2作である。

画面の読み解き

日本語版ウィキペディアが引く研究によれば、ここでは「椅子に座るマタイの脇に天使が立つ」という寄進者の指示から離れ、腰掛に片膝をついて立つマタイに、宙に浮かぶ天使が霊感を与える構図に変えられている。マタイは古代風のオレンジ色の衣をまとった賢者として表され、ペンをインク壺に浸しながら天使を見上げ、その言葉に全神経を集めている。膝をのせた腰掛は、段の端から見る人の側へ落ちかけている。天使は暗い色の翼と白い衣をひるがえして現れ、左手の人差し指を右手の親指と人差し指でつまむしぐさをする。17世紀のジェスチャーの書では、このしぐさは「議論する」を意味するとされ、天使は神の教えを筋道立てて説いていることになるという。

技法・様式

日本語版ウィキペディアによれば、縦に長い画面は宙の天使によって生かされている。第1作が見下ろす視点で描かれていたのに対し、第2作は下から見上げる視点で描かれ、高い祭壇に掛けられたときの見る人の実際の視点に合っている。天使はマタイのすぐ近くまで迫り、宙づりになった舞台の役者のような現実感があり、研究者ミーア・チノッティは、この天使を「カラヴァッジョのもっとも非凡で近代的な創意の一つ」と評した。闇を背景に、強い光がマタイの衣と天使の白い布を浮かび上がらせる。

来歴

日本語版ウィキペディアによれば、礼拝堂の中央には、もとはフランドル出身の彫刻家ヤーコプ・コルネリスゾーン・コバールトの大理石像《聖マタイと天使》が置かれる予定だった。契約から長い年月を経て1602年1月30日にようやく据えられたが、満足を得られず、絵に替えることになった。カラヴァッジョは1602年2月7日にジャコモ・クレッシェンツィと契約を結んだが、最初に描いた作は受け入れられなかった。同時代の伝記作家ジョヴァンニ・ピエトロ・ベッローリは、脚を組んで素足を人々の前にさらしたマタイが、品位も聖人らしさも欠くとして取り払われたと記している。その作はヴィンチェンツォ・ジュスティニアーニが引き取り、のちにベルリンの美術館に入ったが、第二次世界大戦で焼失した。画家は同じ主題でもう一枚を描き、それが本作である。

意義

日本語版ウィキペディアによれば、一般には第1作のほうが革新的な傑作で、本作は教会の価値観に歩み寄った保守的な作品とみられることが多い。しかし研究者の石鍋真澄は、そうした見方が正当な評価を妨げているとし、本作をカラヴァッジョの傑作の一つとみなしている。礼拝堂では、本作を中央に、左に《召命》、右に《殉教》が並び、三点の連作が今もそろって見られる。