《エジプトへの逃避のある風景》
- 作者
- アンニーバレ・カラッチ
- 制作年
- 1603–1604年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 122 × 230 cm
- 所蔵
- ドーリア・パンフィーリ美術館 (所蔵番号FC 236)
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- イタリア・バロック絵画 / 古典主義
半円形の画面に、川の流れる穏やかな谷が広がる。手前の水辺では幼子を抱いた聖母が歩き、ヨセフが荷を積んだロバを引いて渡し舟のほうへ向かう。中央の丘には塔のある城が建ち、右手の斜面では羊飼いが羊の群れを追う。
概要
《エジプトへの逃避のある風景》(伊: Paesaggio con la fuga in Egitto)は、アンニーバレ・カラッチが1603年から1604年頃に描いた油彩画である。縦122センチ、横230センチの横長のキャンバスで、ローマのドーリア・パンフィーリ美術館が所蔵する。所蔵館によれば、ローマのアルドブランディーニ枢機卿の礼拝堂のために描かれた「アルドブランディーニのルネット」と呼ばれる連作の中で最も優れた一点で、風景画の市場での価値と批評の評価を新たな高みに引き上げ、何世代もの画家の手本となった。
画面の読み解き
日本語版ウィキペディアによれば、主題は「マタイによる福音書」に記された聖家族のエジプトへの逃避で、ヘロデ王による幼児殺しを逃れるため、天使のお告げを受けたヨセフが家族を連れてエジプトへ向かう。礼拝堂の壁の上部を飾るため、画面は上辺が弧を描く半円形(ルネット)をしている。広々とした自然に対して人物は小さく描かれ、風景が主役となる。画面中央には水平と垂直の線で厳格に組み立てられた城がそびえ、聖家族はその下を進む。人物は羊の群れと川がつくる二本の対角線の上に置かれ、羊や鳥、牛、ラクダが旅の動きを繰り返している。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、連作の各ルネットは古典的な均衡のある構図をもち、古代の建物を思わせる要素が、いわゆる「理想的風景」をつくり出して、英雄的で高貴な自然の観念を伝える。本作はほぼ全面的にアンニーバレの手とされるが、ほかのルネットは一般に弟子のフランチェスコ・アルバーニや、ドメニキーノ、ランフランコ、シスト・バダロッキオらの作と考えられている。
来歴
所蔵館によれば、連作は1604年から1613年にかけて、ピエトロ・アルドブランディーニ枢機卿の礼拝堂のためにローマで描かれた。本作は、1647年にオリンピア・アルドブランディーニがパンフィーリ家に嫁いだ際の持参財として同家に入った名品の一つである。所蔵番号はFC 236。
意義
日本語版ウィキペディアによれば、美術史家ルドルフ・ウィットカウアーは、本作をカラッチがローマで発展させた新しい風景画様式の最も名高い例とし、ジョン・ルーパート・マーティンは、のちにドメニキーノ、ニコラ・プッサン、クロード・ロランらが受け継ぐ古典的風景画の元祖と呼んだ。宗教画の主題を広い自然の中に置いて礼拝堂を飾ること自体が新しく、17世紀の風景画の出発点となった作品である。