《荊冠のキリスト》
- 作者
- アンソニー・ヴァン・ダイク
- 制作年
- 1618–1620年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 225 × 197 cm
- 所蔵
- プラド美術館 (P001474)
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- フランドル・バロック絵画
上半身をあらわにしたキリストが青い布を膝にかけて座り、縛られた両手を組んでうなだれる。甲冑の兵士が荊の冠を頭上に掲げ、ひざまずいた男が葦を差し出す。左上の窓から男たちがのぞき、左下には犬がいる。
概要
《荊冠のキリスト》(西: La Coronación de espinas)は、フランドルの画家アンソニー・ヴァン・ダイクが1618年から1620年に描いた油彩画で、プラド美術館が所蔵する。縦225センチ、横197センチ。所蔵館によれば、画家の若い時期の作で、ヴェネツィア派の絵画の強い影響を示す。ヴァン・ダイクが師のピーテル・パウル・ルーベンスに贈った作品で、ルーベンスの没後に国王フェリペ4世が手に入れ、エル・エスコリアル修道院に送った。
画面の読み解き
所蔵館によれば、キリストを嘲る人々が周りを囲む。兵士と刑吏が荊の冠を頭にかぶせ、もう一人の男が、偽りの王笏として葦を差し出す。さらに二人の男が窓から様子をうかがう。キリストの姿はティツィアーノの人物から直接借りたものである。
技法・様式
所蔵館によれば、キリストを画面の中心軸に置く構図や、キアロスクーロ(明暗法)の用い方には、17世紀初めのルーベンスのもとで学んだ経験が表れている。絵はいくつもの段階を経て描かれ、犬と窓の男たちは、最初の構図よりあとで加えられた。キリストと犬のあいだの足や、左端の刑吏の肘の近くの手など、描き直しの跡(ペンティメント)が見える。赤外線反射写真とX線写真は、制作の途中の段階と変更を明らかにし、失われた第2の版と比べることができる。大きな違いは、第2の版にあった左の全身の兵士二人が消されたことで、細部の描き込みから、人物がほとんど仕上がった段階で塗りつぶされたとみられる。
来歴
所蔵館によれば、1657年からエル・エスコリアル修道院の「プリオールの参事会室」に掛けられ、1810年にラ・グランハ宮殿、1811年にマドリードの新王宮へ移されたのち、1820年に修道院に戻った。1839年にプラド美術館に入った。木枠の中央の桟には、「茨の冠/この絵はエル・エスコリアルから来たもので、プリオールの参事会室の窓の向かいの側に掛けられていた/アントニオ・ヴァン・ダイク」と書かれた札が残る。
意義
所蔵館は、本作をヴァン・ダイクの若い時期の作品として、2012年の展覧会「若きヴァン・ダイク」で取り上げた。師ルーベンスの構図と明暗の扱いを受け継ぎながら、ティツィアーノらヴェネツィア派に学んだ人物を組み合わせた本作は、イタリアへ旅立つ前の画家の修業の跡を伝える。