《盲人の寓話》
- 作者
- ピーテル・ブリューゲル(父)
- 制作年
- 1568年
- 素材
- キャンバス / テンペラ
- 寸法
- 86 × 154 cm
- 所蔵
- カポディモンテ美術館
- 時代
- ルネサンス
- 流派
- 北方ルネサンス
杖や肩でつながった6人の盲人が、村の聖堂を背に左上から右下へ列をなして進む。先頭の男は溝へ仰向けに倒れ、二人目も引きずられて傾き、後に続く者たちは顔を上に向けて足もとを探っている。
概要
《盲人の寓話》は、ネーデルラントの画家ピーテル・ブリューゲル(父)が1568年に描いた作品で、ナポリのカポディモンテ美術館が所蔵する。館が Google Arts & Culture に寄せた記録では、カンヴァスにテンペラで描かれている。イタリア文化財省の総合目録の調書では、縦86センチ、横154センチ。所蔵番号はQ 1で、ファルネーゼ・コレクションとして館の2階17室に展示されている。左下に「BRVEGEL M. D. LXVIII」の署名と年記がある。
画面の読み解き
館の解説によれば、杖を共有してつながった6人の盲人が、先頭の男が溝に転げ落ちる瞬間をとらえて描かれている。ほかの者たちもまもなく倒れることを、画家は人物を斜めの線に沿って並べることで伝えている。立っている5人は、耳を頼りにしているため顔を上に向けて描かれ、一人一人が異なる種類の盲目として正確に描き分けられている。風景も写実的で、ブリュッセル近郊のシント・アンナ・ペーデの村を表している。日本語版ウィキペディアによれば、背景の聖堂はこの村のシント・アンナ聖堂と同定され、ちょうど3人目の老人の上方に置かれている。
技法・様式
日本語版ウィキペディアによれば、本作はブリューゲルの作品のなかでも数少ない、カンヴァスにテンペラで描かれた作品の一つで、同じ技法の作品に、プラド美術館の《聖マルティンのワイン祭り》と、同じカポディモンテ美術館の《人間嫌い》がある。画面では、灰色や青灰色の外套をまとった人物たちが手前に大きく描かれ、その後ろに、尖塔のある聖堂、木々、村の家並み、右手の小川が淡い色調で広がる。手前の地面は黄土色で、左下には水たまりがある。
来歴
館の解説によれば、ブリューゲルの作品は、1553年から1569年に亡くなるまでの16年間に描かれた約40点しか残っておらず、カポディモンテ美術館はそのうち本作と《人間嫌い》の2点を持つ。どちらも画家の死の前年に描かれ、ともに1559年の《ネーデルラントの諺》に見られる寓意を描き直したものである。2点は、1611年にパルマを治めるファルネーゼ家が、クーデター未遂ののちに敵対するマシ家から没収して、その収集に加えた。
意義
館の解説によれば、本作は、盲人が盲人を導けば二人とも穴に落ちるというキリストのたとえ(マタイによる福音書15章14節、ルカによる福音書6章39節)を絵にしたものである。同時に、本作は目で見る掛け言葉にもなっている。たとえ(パラボラ)を描いた画面のなかで、人物たちが下へ傾いていく動きは、数学で弓なりの曲線を指すパラボラ(放物線)を思わせる。館は、こうした機知は、画家の人文主義者の仲間である教養の高い鑑賞者を楽しませたとしている。日本語版ウィキペディアによれば、本作は、宗教改革で揺れる当時のネーデルラントで、偽りの指導者に導かれて真の信仰を見失った民衆を暗に示すとも考えられている。