《ブラック・ブランズウィッカー》
- 作者
- ジョン・エヴァレット・ミレー
- 制作年
- 1860年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 104 × 68.5 cm
- 所蔵
- レディ・リーヴァー・アート・ギャラリー (LL 3643)
- 時代
- 写実・印象派
- 流派
- ラファエル前派
緑の壁紙の部屋で、髑髏の徽章を付けた黒い軍服の兵士が、光沢のある白いドレスの女性を抱き寄せる。女性はうつむき、扉を押さえて彼を行かせまいとする。壁にナポレオンの版画が掛かり、足もとで黒い犬が見上げる。
概要
《ブラック・ブランズウィッカー》は、イギリスの画家ジョン・エヴァレット・ミレーが1860年に描いた油彩画で、イングランド北西部ポート・サンライトのレディ・リーヴァー・アート・ギャラリーが所蔵する。縦104センチ、横68.5センチのキャンバスで、左下に年とミレーのモノグラムがある。同館の第10室に展示されている。
画面の読み解き
所蔵館によれば、主題は歴史の一場面を想像した出来事である。「黒衣のブラウンシュヴァイク兵」は、1809年にブラウンシュヴァイク公フリードリヒ・ヴィルヘルムが編成した特別な部隊で、髑髏の帽章と任務への献身から「死か栄光か」と呼ばれ、1815年のワーテルローの戦役のうち、カトル・ブラの戦いで大きな損害を受けた。画面では、恋人の女性が身体で兵士の行く手をふさぎ、彼の運命を押しとどめようとする。壁にはダヴィッドの《アルプスを越えるナポレオン》の版画が掛かり、ワーテルローを思い出させると同時に、ナポレオン3世が北イタリアで戦った1860年当時の情勢もほのめかす。
技法・様式
所蔵館によれば、ミレーは3か月をかけて本作を描いた。少女のモデルは作家チャールズ・ディケンズの娘ケイト、兵士のモデルは近衛騎兵連隊の兵卒で、二人は別々に、人台に寄りかかってポーズをとった。ミレーは歴史に忠実であろうとし、女性のドレスは、腰の位置がまだ高かった1809年と1815年の流行の折衷になっている。館は、暗く閉ざされた部屋が悲劇を強め、ドレスの輝きだけがやや目を奪うと述べる。兵士の足もとの犬は、主題の人間らしさに目を向けさせる。
来歴
所蔵館によれば、ミレーは妻エフィーへの手紙で、『タイムズ』紙の従軍記者ラッセルもこの主題を絶賛しており、衣装と出来事がこれほど力強いのに、これまで誰も取り上げなかったことに驚いている、と書いた。作品は画商ガンバールから収集家トマス・エドワード・プリントに渡り、1862年のプリントの売り立て以降、何人かの所有者を経て、1898年にウィリアム・ヘスケス・リーヴァーが画商アグニューから買い取った。準備習作は同館とテート・ブリテンにある。
意義
館は、本作が見る人の愛国心と感傷の両方に訴えると評する。歴史上の出来事を、名もない恋人たちの別れという風俗画の形で描いた作品である。ミレーの作品には、ほかに《オフィーリア》や《盲目の少女》がある。