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《盲目の少女》

The Blind Girl
《盲目の少女》ジョン・エヴァレット・ミレー
Wikimedia Commons / バーミンガム美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ジョン・エヴァレット・ミレー
制作年
1856年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
80.8 × 53.4 cm
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ジョン・エヴァレット・ミレーが1856年に発表した油彩画。雨上がりの野原の道端に、目の見えない少女と、妹とみられる幼い少女が座る。姉は日のぬくもりと草の感触を確かめ、妹は振り返って空の二重の虹を見上げている。

概要

《盲目の少女》(英: The Blind Girl)は、ジョン・エヴァレット・ミレーが1854年から1856年にかけて描き、1856年のロイヤル・アカデミー展に出品した油彩画である。雨上がりの野原の道端に、旅をしながら物乞いをする目の見えない少女と、その妹とみられる少女が座り、背後の空には二重の虹がかかる。ラファエル前派の結成に加わったミレーが、自然の細密な観察と、同時代の貧しい人々の姿を結びつけた作品で、バーミンガム美術館が所蔵する。

来歴

背景の風景は1854年、イングランド南東部の丘の上の町ウィンチェルシーの近くで、戸外で直接描かれた。人物は、ミレーがエフィー・グレイと結婚して移り住んだスコットランドのパースで描き加えられた。はじめはエフィーが姉のモデルを務めたが、ミレーはのちにその顔を削り取り、パースの貧しい子どもたちのための学校から招いた少女マチルダ・プラウドフットの顔に描き替えたという。1856年にロイヤル・アカデミー展で公開され、1892年、バーミンガム市長や国会議員を務めた実業家ウィリアム・ケンリックがバーミンガム美術館に寄贈した。

画面の読み解き

嵐が過ぎたばかりの野原で、姉妹が土手に腰を下ろして休んでいる。姉は目を閉じて顔を日に向け、膝には暮らしの糧である手風琴(コンサーティーナ)を置く。首には「盲人をあわれみたまえ(PITY THE BLIND)」と書いた札が下がる。姉は指先で草の葉にふれ、雨上がりの日差しのぬくもりを確かめている。肩掛けにとまるチョウのコヒオドシは、彼女が身じろぎもせずにいることを示す。妹は姉にすがって振り返り、空にかかった二重の虹を見上げる。背後には雨に洗われた緑の牧草地が広がり、牛や馬、カラスが散らばり、丘の上には赤い屋根の家並みが見える。

光あふれる景色を見る妹と、それを見ることができず、ほかの感覚で世界を受け取る姉との対比から、本作は五感の寓意とも読まれてきた。虹を、旧約聖書の創世記で神が洪水の後に結んだ契約のしるしと解釈し、見えない者にも注がれる恵みを表すとみる批評もある。一方で、札を下げて道を行く姉妹の姿は、当時の社会で居場所を持たない子どもや障害のある人々の境遇を、感傷に流れず描き出している。

技法・様式

キャンバスに油彩で描かれている。ラファエル前派の画家たちは、白い下地の上に透明な絵具を薄く重ねるグレーズの技法で、宝石のように澄んだ色を得ようとした。本作でも、草の一本一本、少女の髪やショールの織り目、遠くの家並みまでが、晴れた日の光の中で鮮やかに描き分けられている。展示の後、二重の虹では外側の虹の色の並びが内側と逆になると指摘され、ミレーは両方を同じ順に塗っていた外側の虹を描き直した。観察に忠実であろうとしたラファエル前派の姿勢を伝える逸話である。

意義

1850年代半ばのミレーは、ラファエル前派の細密な描写を保ちながら、同時代の暮らしに主題を求め、やがてより自由な筆致へと移っていく。本作はその転換期に、自然の美しさと社会の弱い立場の人々への共感を一つの画面にまとめた作品である。所蔵するバーミンガム美術館は、ラファエル前派の作品を世界で最も多く収める美術館として知られ、本作はその中核をなす一点となっている。