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《愚者の船》

La Nef des fous
《愚者の船》ヒエロニムス・ボス
Wikimedia Commons / ルーヴル美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ヒエロニムス・ボス
制作年
1491–1500年
素材
板 / 油絵具
寸法
58 × 33 cm
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木を帆柱にした小舟で、修道士と修道女がリュートを抱え、吊るされた丸い菓子に口を開ける。食卓にはサクランボが並び、男が帆柱をよじ登って鶏の丸焼きに手を伸ばす。舟の外では裸の男たちが泳いでいる。

概要

《愚者の船》(仏: La Nef des fous)は、ネーデルラントの画家ヒエロニムス・ボスが描いた油彩画である。縦58センチ、横33センチの樫の板で、パリのルーヴル美術館が所蔵する。所蔵館によれば、失われた三連祭壇画の左翼の内側の上の部分にあたる断片で、館の目録は「放蕩する酒宴の人々の風刺」という別題も記す。1914年に再発見されたとき、セバスティアン・ブラントの書物にちなんで今の題が付けられた。

画面の読み解き

木を帆柱にした小さな舟に、修道士と修道女、酔客たちがひしめいて宴に興じる。中央では修道士と修道女がリュートを抱えたまま口を開け、ひもで吊るされた丸い菓子に食いつこうとしている。板を渡しただけの食卓にはサクランボの皿と杯が置かれ、左には棒の先に水差しが掲げられる。男が帆柱の木をよじ登り、幹に結ばれた鶏の丸焼きに刃物を伸ばす。右の枝には道化の衣装の男が腰かけて杯をあおり、その下では一人が舟べりから身を乗り出している。舟の外では裸の男たちが泳ぎながら器を差し出し、木の上には長い旗がなびく。所蔵館の目録は、大食漢と酔っ払いと愚か者の集まりが、目当てもなく漂う舟に乗っていると説明する。

技法・様式

樫の板に油彩で描かれる。所蔵館の目録によれば、本作は左、右、下が切り詰められている。下の部分にあたるイェール大学美術館の板(縦39センチ、横31センチ)とぴったりつながり、両方を合わせたもとの高さは、対になる右翼(ワシントン)とほぼ同じになる。三連祭壇画の翼はのちに厚みの中で二枚に割かれ、グリザイユで描かれた外側の面は合わせて八角形に切られて、ロッテルダムにある《行商人》となった。館の展覧会の解説によれば、翼を閉じたときに現れる、杖をついて歩く老いた男は、人間のたとえとみられる。

来歴

所蔵館によれば、1914年より前、おそらく1907年ごろに、1888年から1918年まで館の絵画部の学芸員だったカミーユ・ブノワが手に入れ、1918年に館へ寄贈した。所蔵番号はRF 2218で、リシュリュー翼の815室に展示されている。館には、この板をグリザイユで写した古い素描も残る。制作の時期について、目録は1491年以降、15世紀の最後の四半世紀とし、館の展覧会「狂人の姿(Figures du fou)」の解説は1505〜1515年ごろとする。

意義

館の展覧会の解説によれば、1494年にストラスブールの学者ブラントが出した『阿呆船』は、時代の混乱の源を、疫病のように広がる狂気に見た。それは、舵も羅針盤もなく世界の海を深淵へと漂う、狂人たちを乗せた船にたとえられた。印刷術の誕生とともに広く読まれたこの本の挿絵は、まだらの衣にロバの耳と鈴の頭巾、杖という道化の姿を定着させた。館は三連祭壇画全体の主題を、プラド美術館の《干し草車》と同じく七つの大罪とみる。目録によれば、右翼の《守銭奴の死》が責める貪欲に対し、左翼は反対の悪徳である大食と酒の愚かさを示し、罪は狂気だと告げる寓意画である。