《主教の庭から見たソールズベリー大聖堂》
両側から高い木々が枝を差しかけ、そのあいだに白い大聖堂と尖塔が明るく浮かぶ。空には雨雲が広がり、手前の池では牛が水を飲む。左下の小道の門のそばには、主教夫妻とみられる男女が立つ。
概要
《主教の庭から見たソールズベリー大聖堂》(英: Salisbury Cathedral from the Bishop's Grounds)は、ジョン・コンスタブルが1823年に描いた油彩画である。縦87.6センチ、横111.8センチ。ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館が所蔵する。所蔵館によれば、ソールズベリー主教のジョン・フィッシャー博士が1820年に注文したもので、1823年のロイヤル・アカデミー展ではコンスタブルの主な出品作となった。主教の一家はコンスタブルの最も親しい友人たちで、画家は主教の娘の一人に絵を教えてもいた。中世の大聖堂を木々と牧草地の中に描いた、ロマン主義の時代のイギリスを代表する風景画の一つである。
画面の読み解き
両側から高い木々が枝を差しかけ、そのあいだに、明るい灰白色の大聖堂と高い尖塔がそびえる。空には白い雲と灰色の雨雲が入り混じって流れる。手前の池では牛が水を飲み、奥の牧草地にも牛が点々と草を食む。左下の小道には門があり、その脇に男女が立つ。所蔵館によれば、人物の身元には混乱があったが、いまでは門のところにいるのが主教夫妻、小道を少し先へ進んだところにいるのが夫妻の娘の一人、おそらくドリーとみられている。
技法・様式
所蔵館によれば、コンスタブルは画布に取りかかる前に一連の下絵を描いた。所蔵館が引く2025年のテートの展覧会図録によれば、主教からの注文は名誉だったが、同時に多くの難題を伴った。コンスタブルは、主教の甥で親友のジョン・フィッシャーに、この仕事が「怖い」と打ち明け、これまで画架に載せたなかで最も難しい主題だと書いている。所蔵館は本作を、雲、木々、水辺の牧草地、池の縁で水を飲む牛、そして中世の大聖堂の見事な建築という、典型的なイギリスの風景画の要素をすべて備え、しかもそれを人の身の丈の大きさにまとめた作品とする。左下には署名と書き込みがあるが、いまでは読めない。
来歴
所蔵館によれば、1823年のロイヤル・アカデミー展の後、コンスタブルは小さな版と原寸の複製を描くよう求められた。図録によれば、完成作を受け取った主教が暗い雲を好まなかったため、コンスタブルは空の明るい版を描いた。その一点は、カリフォルニア州サンマリノのハンティントンにある。本作は1857年、収集家ジョン・シープシャンクスの寄贈で所蔵館に入った。所蔵番号FA.33。
意義
所蔵館によれば、19世紀を通じて油彩の風景画は次第に人気を高め、コンスタブルと同時代のターナーが、風景を重要な主題として確立した。それまでは歴史画のほうが重んじられていたが、イギリスの眺めを自然に描いた絵が、より広い買い手をひきつけるようになった。図録は、本作の経緯に、表現豊かで生き生きとした風景を求める画家自身の見方と、注文主の期待とのあいだに開き始めた溝を見ている。所蔵館は、こうした絵がイギリスの田園の見方をすっかり形づくったため、田園とその暮らしが大切にされなかった時代を想像するのは難しいほどだと述べる。