《草原から見たソールズベリー大聖堂》
黒い嵐雲が渦巻く空の下、草原の向こうに大聖堂の尖塔がそびえ、その右へ虹が弧を描く。手前の川では馬に引かれた荷車が浅瀬を渡り、岸には一匹の犬がいる。
概要
《草原から見たソールズベリー大聖堂》(英: Salisbury Cathedral from the Meadows)は、イギリスの画家ジョン・コンスタブルが描き、1831年のロイヤル・アカデミー展に出品した油彩画である。縦151.8センチ、横189.9センチのキャンバスで、テートが所蔵し、テート・ブリテンで公開されている。画家は「大ソールズベリー」と呼び、自作の中で最も重要な作とみなした。
画面の読み解き
テートの研究頁「In Focus」(エイミー・コンキャノン編)によれば、画家が立ったのは、フィッシャートン水車場のそばのナダー川の曲がり角とみられる。大聖堂は水の多い風景の中の石の塊として描かれ、尖塔が雲に満ちた空を突き刺す。虹と木とナダー川がつくる円い流れが、中央の大聖堂へ目を集める。川の中央では荷車が浅瀬を渡り、葦の中から男が棹で小舟を進め、手前には牧羊犬のコリーがいる。犬は《麦畑》からそのまま取られ、荷車は《乾草の車》のものを思わせる。右には大聖堂の構内を囲む1327年の赤れんがの塀があり、そのすぐ左の家は友人ジョン・フィッシャーが住んだリーデンホールとされる。左端には聖トマス教会がのぞき、手前の赤い衣の人物と古い門柱がそこへ目を導く。ただし、教会は画家の立ち位置からは見えなかったはずで、地形の正確さより構図が優先されている。
技法・様式
同じ研究頁によれば、幅およそ6フィート(約2メートル)の大作「シックス・フッター」13点の一つで、平織りの亜麻布に描かれ、その中で最も正方形に近い。空は最初に大きな筆で薄く塗られ、ところどころ削られてピンクがかった茶色の地がのぞく。中央は厚いインパストで、パレットナイフで置いた純色の点や筆触が彫刻のような凹凸をつくる。右端の草原と川面は水平の筆触で静かにまとめられている。黄色の顔料はいまでは鈍い黄土色に変わったが、鉛白は変わらず、枝や葉が暗い下地から強く浮き立って見える。
来歴
同じ研究頁によれば、画家は1829年7月と11月にソールズベリーに滞在し、本作の構想を練った。前年に妻マライアを亡くしており、フィッシャーは「雲の下の教会」が最良の主題だと励ました。1831年の展覧会では、批評家が「空はまったくの錯乱状態」と評するなど評価は厳しかった。画家は展示後も手を加え、1833年から1836年にかけてロンドン、バーミンガム、ウスターでも出品した。虹が批評に初めて現れるのは1834年である。テートの報道発表によれば、1983年からロンドン・ナショナル・ギャラリーに長期貸与されていたが、2013年、テートが5館の連携「アスパイア」の一環として購入した。所蔵番号はT13896。
意義
同じ研究頁によれば、画家の友人で伝記作者のC.R.レズリーは、本作をその芸術の幅を最も十全に伝える作とした。画家は1821年、空を絵の「感情の主要な器官」と書いている。嵐雲は妻を失った悲しみ、虹は神の慰めと読まれてきた。虹はフィッシャーの家の上に降りており、1832年のフィッシャーの死後に加えた追悼かもしれない。また、選挙法改正に揺れる時代の「雲の下の教会」として、政治的な意味を読む研究もある。