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《パリスとヘレネの恋》

Les amours de Pâris et d'Hélène
《パリスとヘレネの恋》ジャック=ルイ・ダヴィッド
Wikimedia Commons / ルーヴル美術館 / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ジャック=ルイ・ダヴィッド
制作年
1788年
素材
キャンバス / 油絵具
寸法
146 × 181 cm

女人像柱の並ぶ石造りの部屋で、赤い帽子の若者が寝台の端に腰かけ、竪琴を手に傍らの女性を見上げる。白い衣に薔薇色の外衣の女性は、若者の肩に手を置いて身を寄せ、うつむいて目を伏せる。

概要

《パリスとヘレネの恋》(仏: Les amours de Pâris et d'Hélène)は、フランスの画家ジャック=ルイ・ダヴィッドが1788年に描いた油彩画である。縦146センチ、横181センチのキャンバスで、パリのルーヴル美術館が所蔵する。フランス文化省の作品目録によれば、ホメロスの『イリアス』に取材し、トロイアの王子パリスと、スパルタ王の妃ヘレネの恋を描いた神話画である。

画面の読み解き

画面の中央で、裸のパリスが赤いフリギア帽をかぶり、青い布を肩にかけて寝台の端に腰かける。左手に竪琴を持ち、右腕でヘレネの腕を取って、彼女の顔を見上げる。ヘレネは白い薄衣の上に薔薇色の外衣をまとい、パリスの肩に手をかけて寄り添い、目を伏せる。背後の寝台には濃紺の布が掛けられ、その上の梁を4体の女人像柱(カリアティード)が支える。左には、クッションの置かれた椅子と、小さな彫像をのせた柱が立ち、柱には矢筒と弓が掛かる。右には壁龕の女性像と香炉の三脚台があり、床は色大理石で飾られる。手前の段の下には、水の流れこむ水盤がのぞく。

技法・様式

キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、左下に「L. David faciebat Parisiis anno MDCCLXXX-VIII(L・ダヴィッド、パリにて1788年に制作)」の署名と年記がある。建物の線はくっきりと引かれ、人物は明るい光の中でなめらかに仕上げられる。濃紺、薔薇色、橙の布の色が、白い石の部屋のなかで際立つ。主題は、同じ1780年代に描いた古代の英雄の歴史画とは異なり、寝室の親密な一場面である。

来歴

所蔵館によれば、国王の弟アルトワ伯(のちのシャルル10世)が1785年か1786年に注文し、バガテル城の寝室のためだったとも考えられる。伯はフランソワ=アンドレ・ヴァンサンにも対になる《リナルドとアルミーダ》を注文したが、こちらは失われた。本作は1789年8月25日に開いたサロンに出品された。伯は同年7月16日に国外へ亡命しており、財産は差し押さえられ、1792年の法令で亡命者の財産として国に没収された。本作は1794年に伯のパリの邸宅で目録に記され、その後は内務省などに置かれた。1820年3月にリュクサンブール美術館が引き取りを求め、おそらく4月から展示された。画家の死後、1826年1月にルーヴル美術館へ移され、3月から展示された。所蔵番号はINV 3696で、ドノン翼の第702室(ダリュの間)に展示されている。

意義

所蔵館は、本作を「新古典主義」をテーマとするダリュの間に並べている。同館は2025年10月から2026年1月に開いた展覧会「ジャック=ルイ・ダヴィッド」にも本作を出品した。文化省の目録は、主題の要素として、パリスの神話、裸体、フリギア帽、竪琴、ヘレネ、愛、愛撫、寝台、女人像柱、彫像を挙げている。