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《聖セバスティアヌスの殉教》

《聖セバスティアヌスの殉教》アントニオ・デル・ポッライオーロ / ピエロ・デル・ポッライオーロ
Wikimedia Commons / ロンドン・ナショナル・ギャラリー / Public domain 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ピエロ・デル・ポッライオーロ 、 アントニオ・デル・ポッライオーロ
制作年
1475年
素材
板 / 油絵具
寸法
291.5 × 202.6 cm
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木に縛られた若い聖人が天を仰ぎ、体には矢が刺さる。足もとでは6人の射手が弓を引き、石弓に矢をつがえる。後ろでは騎馬の兵士が見上げ、左には崩れかけた凱旋門、奥には川の蛇行する広い谷が遠く青く霞む。

概要

《聖セバスティアヌスの殉教》は、フィレンツェの兄弟の画家アントニオ・デル・ポッライオーロとピエロ・デル・ポッライオーロが1475年に完成させた油彩の祭壇画で、ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。館の記録では縦291.5センチ、横202.6センチの板に描かれ、所蔵番号はNG292で、第60室に展示されている。館によれば、フィレンツェのサンティッシマ・アンヌンツィアータ聖堂の中庭の隣にあった、銀行家で寡頭支配層の一人アントニオ・プッチの私設の礼拝堂(聖セバスティアヌス祈祷所)のために描かれ、絵の前の祭壇には、聖セバスティアヌスの腕の骨とされる聖遺物が納められていた。

画面の読み解き

館の解説によれば、腰布だけをまとった青白い若者が木に縛られ、体を射抜く矢にも動じないかのように天を見上げている。聖セバスティアヌスは、ひそかにキリスト教に改宗したローマの兵士で、信仰が知られて処刑された。矢を射られても奇跡的に生き延びたため、打ち殺されたという。15世紀のイタリア中部はたびたびペストに襲われ、矢傷は病の腫れ物に似ていると考えられたことから、聖セバスティアヌスはペスト除けの聖人としてたいへん人気があった。聖人の背後では、馬上の騎士たちが恐れおののいて聖人を見上げる。当時の甲冑を着ているが、ローマの兵士を表しており、一人は「元老院とローマ市民」を意味するSPQRの頭文字の入った赤い旗を持つ。左の崩れかけた凱旋門は、キリスト教が打ち負かした異教の文化を象徴するのかもしれず、プッチ家の紋章を刻んだ円形の飾りがつき、側面には聖人の生涯の先立つ場面、下に戦い、上に皇帝の前での裁判が描かれている。

技法・様式

館によれば、祭壇画の大きさは置かれた場所に直接左右された。プッチ家の礼拝堂は通りから直接入れるほど大きく、祭壇画は16メートル以上離れた所からもはっきり見える必要があった。多くの板を並べた中世の多翼祭壇画と違い、一つの大きな画面にまとめたこの形式と大きさによって、兄弟は線遠近法と、素描の力(ディゼーニョ)を存分に示した。聖人と射手たちの記念碑的な人物は前景に巨大な三角形をつくり、射手たちの腕と脚は画面の両端に迫る。どちらの兄弟がどこを描いたかを見分けるのは難しいが、館は、動きの途中で凍りついたような筋骨たくましい射手たちはおそらく彫刻家でもあったアントニオの手になり、柔らかく手足の長い聖人の体はピエロの様式に近いとする。射手たちは2人ずつ組になって3つの基本の姿勢をとり、さまざまな角度から見えるよう向きを変えられており、アントニオは手本に小さな彫像を作ったのかもしれない。さらに館によれば、川の蛇行する広い谷の見晴らしは、ネーデルラント絵画に由来する。兄弟は当時のイタリア絵画で普通だったテンペラではなく油絵具を用い、地平の青い丘へと薄れていく色の微妙な移り変わりを表した。川には舟が浮かび、岸の道を人々が行き、遠くの城壁の町にはブルネレスキの円蓋とジョットの鐘楼の輪郭がかすかに見えて、フィレンツェであることがはっきり分かる。場面は古代ローマからアルノ川の谷へ移されている。

来歴

館の来歴によれば、本作は1510年にアンヌンツィアータ聖堂に付属する祈祷所にあることが初めて記録され、19世紀までそこにあった。おそらく1830年代にフィレンツェのプッチ宮に移され、1857年に館がロベルト・プッチ侯爵から購入した。

意義

館によれば、アントニオ・プッチはフィレンツェを治めたメディチ家のロレンツォ・デ・メディチの右腕の一人で、メディチ家が資金を出した美術の豪華さと新しさにならおうとした。古典とキリスト教の図像を混ぜ合わせた本作は、メディチ家が後押しした古代風(アッランティーカ)の作品へのフィレンツェの熱中をよく表している。同じ時期のピエロの《アポロンとダフネ》にも、よく似た風景が描かれている。