《希望II》
- 作者
- グスタフ・クリムト
- 制作年
- 1907–1908年
- 素材
- キャンバス / 油絵具・金・プラチナ
- 寸法
- 110.5 × 110.5 cm
- 所蔵
- ニューヨーク近代美術館
- 時代
- 世紀末〜ポスト印象
金を散らした暗い地に、胸をあらわにした妊婦が、円の文様を織り込んだ赤と金の衣をまとってうつむき、目を閉じる。腹の横の衣のかげには髑髏がのぞき、足もとでは三人の女性が頭を垂れて手を上げる。
概要
《希望II》は、ウィーンの画家グスタフ・クリムトが1907年から1908年に描いた寓意画で、ニューヨーク近代美術館が所蔵する。館の記録では縦横110.5センチの正方形のキャンバスに、油彩に金とプラチナを加えて描かれている。館によれば、クリムト自身はこの作品を《幻視(ヴィジョン)》と呼んだが、妊婦を描いた以前の関連作を《希望》と名づけていたことから、それにちなんで《希望II》の名で知られるようになった。
画面の読み解き
館の解説によれば、身ごもった女性が頭を垂れて目を閉じ、子の無事を祈っているかのようである。その腹の向こうから髑髏がのぞき、彼女が直面する危険を不気味に示す。足もとでは三人の女性が頭を垂れて手を上げ、やはり祈っているとみられるが、その厳かさは、子の運命を見越して悼んでいるようにも見える。館の2019年の展示ラベルは、女性と子どもの像は美術史に多いが、妊娠の姿を描いた絵はまれだと指摘する。
技法・様式
館によれば、クリムトは、東と西が出会う町ウィーンに住み、ビザンティン美術、ミケーネの金工、ペルシアの絨毯や細密画、ラヴェンナの聖堂のモザイク、日本の屏風などから学んだ。この絵の女性の金の文様の衣は、ロシアのイコンの衣のように平らに描かれる一方、肌は丸みと量感をもち、並外れた装飾の美しさを見せる。展示ラベルは、ビザンティンの金地の絵画という古い伝統と、近代の心理的な主題とを結びつけた作品とする。
来歴
館の来歴によれば、作品は画家の手からオイゲニア・プリマヴェージの所蔵となり、1928年の分離派会館でのクリムト追悼展のころにはウィーンのノイエ・ガレリーにあった。のちにフーゴ・ベルナツィクとその相続人、ウィーンのハンス・バルナスの手を経て、1978年にバーゼルのバイエラー画廊を通じて館が入手した。所蔵番号は468.1978で、館の5階に展示されている。
意義
館は、ここでは誕生と死と生きる者の官能が隣り合い、釣り合いの中で宙づりになっているとまとめる。展示ラベルは、性と死という根源の衝動へのクリムトの関心が、同じ世紀末のウィーンに生きたフロイトの心の探究と並行していたと述べる。妊婦を描いた先行作は《希望I》である。