《聖母戴冠》
星をちりばめた青い虹の帯の上で、玉座のキリストが聖母に冠を授ける。背後には天使たちがひしめき、左右には白い修道服の聖ベネディクトゥスや聖ロムアルドゥスら、ひざまずく聖人が並ぶ。
概要
《聖母戴冠》は、フィレンツェの画家ロレンツォ・モナコが1414年に描いた祭壇画で、ウフィツィ美術館が所蔵する。館の記録では、金地の板にテンペラで描かれ、縦450センチ、横350センチ。所蔵番号は1890年目録の885番で、館のA7室(ロレンツォ・モナコとジェンティーレ・ダ・ファブリアーノの部屋)に展示されている。館の解説によれば、下部の銘は、この大祭壇画がザノービ・ディ・チェッコ・デル・フラスカの注文で、フィレンツェのカマルドリ会のサンタ・マリア・デッリ・アンジェリ修道院の聖堂の主祭壇のために、その修道院に暮らす修道士ドン・ロレンツォによって描かれたことを伝えている。
画面の読み解き
館によれば、銘にある1413年2月という日付は、今日の暦では1414年2月にあたる。フィレンツェでは18世紀まで、一年が受胎告知の祝日の3月25日に始まっていたからである。画面では、キリストと聖母が玉座に並んで座り、子であるキリストが母に冠を授ける。そのまわりには天使たちと、両脇にひざまずく大勢の聖人がいる。そのなかには、カマルドリ会の白い修道服を着た、左の聖ベネディクトゥスと右の聖ロムアルドゥスが目立つ。二人はそれぞれ西方の修道制とカマルドリ会の創始者である。
技法・様式
館によれば、祭壇画は三連の形をとるが、場面は一つにまとめられ、中世の宇宙観で宇宙をなす天の球を象徴する、星をちりばめた虹のような帯の上に置かれている。上の尖頭部には中央の父なる神と受胎告知が描かれ、下の裾絵には、ゴシックの装飾に特有の曲線と直線を組み合わせた枠のなかに、中央にキリストの降誕と東方三博士の礼拝、両脇に聖ベネディクトゥスの生涯の4場面が描かれる。日本語版ウィキペディアによれば、1990年の調査で、当時高価だったラピスラズリが絵具に使われていることがわかった。
来歴
館が Google Arts & Culture に寄せた解説によれば、本作は1593年に、アレッサンドロ・アッローリの画布の祭壇画(いまはアカデミア美術館にある)に置き換えられ、チェルタルド近郊のチェッレートにあるサン・ピエトロ修道院へ送られた。日本語版ウィキペディアによれば、19世紀に保存状態の悪い姿で再発見され、1872年に額の中に復元された。館の解説では、1864年からウフィツィにある。
意義
館は、ロレンツォ・モナコを、フィレンツェの後期ゴシック絵画の第一人者であり、写本の挿絵の画家としても名高い画家とする。そして、細身の体と洗練された衣の線のリズムによって、聖なる出来事に立ち会う聖人たちの、思いに沈む顔に表れた超越の感覚を引き出し、自らの絵の言葉をカマルドリ会の霊性に役立てたと述べる。同館は、同じ画家の《東方三博士の礼拝》も所蔵する。