《マグダラのマリアの回心》
- 作者
- アルテミジア・ジェンティレスキ
- 制作年
- 1620年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 146.5 × 108 cm
- 所蔵
- パラティーナ美術館 (1914 n. 142)
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- イタリア・バロック絵画
黄色い絹の衣をまとい、髪を乱した若い女性が、胸に手を当てて天を仰ぎ、もう一方の手で机の上の鏡を押しやる。鏡のそばには髑髏が置かれ、その上に文字が記される。左の椅子の脚にも文字が書き込まれている。
概要
《マグダラのマリアの回心》は、イタリアの画家アルテミジア・ジェンティレスキが1620年頃に描いた油彩画で、フィレンツェのピッティ宮殿のパラティーナ美術館が所蔵する。縦146.5センチ、横108センチのキャンバスで、館の題は《聖マリア・マグダレーナ》。所蔵番号は1914年目録の142番で、館の記載では「イーリアスの間」に展示される(2026年10月の時点で同室は一時閉鎖中)。
画面の読み解き
所蔵館によれば、マグダラのマリアは、徳を求め、世俗の快楽を捨てる理想の手本として、画家にも人々にも愛された主題だった。アルテミジアは、その困難な道のりを、髪を乱し、見事な黄色い絹の衣に包まれた若い女性の姿で語る。女性は、虚栄の象徴である鏡を自分から押しやろうとしており、その上には「彼女は最良の分を選んだ(Optimam partem elegit)」、つまり徳を選んだ、という言葉が記されている。鏡のそばには髑髏も置かれ、ヴァニタスの主題を重ねている。
技法・様式
所蔵館によれば、強い光が右から人物を照らし出す。これはアルテミジアがローマでカラヴァッジョの絵を学んで身につけた手法で、いま起きている劇の緊張を見る者に感じさせる。絹の衣の大きな襞は光を受けて輝き、暗い背景との対比が人物を浮かび上がらせる。左の椅子の脚には、画家の名が書き込まれている。
来歴
所蔵館によれば、アルテミジアはごく若くしてローマからフィレンツェに来て、女性として初めてフィレンツェの美術アカデミー(アカデミア・デッレ・アルティ・デル・ディゼーニョ)に入った。成人してから読み書きやリュートを学び、文化人の世界に加わった。本作は、そのフィレンツェ時代の終わり頃、1620年頃に描かれた。
意義
所蔵館は、マリアの内なる苦悩が、わずか数年前に暴行を受け、裁判の屈辱に耐えた画家自身の境遇を、ある意味で映していると述べる。館は、女性の才能が認められる先駆けとしてアルテミジアを位置づけている。同じ画家の作品には、《ユディトとその侍女》や《ヤエルとシセラ》がある。