《コロンナの聖母》
本を手にした聖母が、膝の上で身をひねる幼子を抱きとめる。幼子は片手で聖母の襟もとをつかみながら、くるりと振り向いて見る者のほうへ顔を向け、背後には低い地平線の明るい風景と細い木々が広がる。
概要
《コロンナの聖母》は、イタリアの画家ラファエロ・サンティが1507年から1508年頃に描いた油彩の板絵で、ベルリン絵画館が所蔵する。館の題は「聖母子(コロンナの聖母)」。館の記録では、ポプラ材の板に描かれ、画面は縦79センチ、横58.2センチ。所蔵番号は248で、2019年の館の特別展の資料では館の29室に展示されている。館の解説によれば、ラファエロのフィレンツェ時代の終わりに描かれ、ベルリンにあるラファエロの作品のなかで最も新しい。
画面の読み解き
画面では、明るい金髪の聖母が、赤い衣の肩と膝に青い布をかけ、左手に開いた本を持ち、右腕で膝の上の幼子イエスを抱きとめている。裸の幼子は聖母の膝の上で体をひねり、片手で聖母の衣の襟もとをつかみながら、顔をこちらへ向けている。館の解説によれば、キリストは一見とっさに見える身のひねりで、励ますように見る者に顔を向けている。背景には、低い地平線の上に明るい空が広がり、細い木々の立つ穏やかな風景が遠くまで続いている。
技法・様式
館の解説によれば、本作では、わずか数年前の《テッラヌオーヴァの聖母》と比べて、はっきりとした変化が起きている。色調は全体に明るくなり、髪の色も暗い金色から明るい金色へ変わっている。明暗の対比はやや控えめになり、肉づけはより柔らかい。顔だちはやわらかく豊かになり、動きはのびやかで生き生きとし、優美になっている。同時に地平線は低くなり、風景は軽やかになって、木々は羽毛のように描かれている。
来歴
館の記録によれば、本作は1827年に、ローマのコロンナ・ランテ・デッラ・ローヴェレ公爵夫人マリアの収集から購入された。通称はこのコロンナ家の名による。2019年の特別展「ベルリンのラファエロ 絵画館の聖母子像」の資料によれば、ベルリンにあるラファエロの5点の聖母子像はどれも19世紀前半に購入されたもので、1830年に開館した最初のベルリンの美術館(現在の旧博物館)に並んだ。本作には、建築家カール・フリードリヒ・シンケルが1827年から1830年にかけてデザインした、金めっきの聖龕形の額が作られている。
意義
館の特別展の資料は、ベルリンのラファエロの聖母子像が、イタリアの14〜15世紀の絵画が再発見されたロマン主義の時代のラファエロ崇拝を物語るものだとしている。同じ館には、本作より早い《ソリーの聖母》や《ディオタッレーヴィの聖母》もある。2019年から2020年の特別展では、ベルリンの5点の聖母子像に、ロンドン・ナショナル・ギャラリーから《カーネーションの聖母》が加わって並べられた。