《青い馬Ⅰ》
- 作者
- フランツ・マルク
- 制作年
- 1911年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 112 × 84.5 cm
- 所蔵
- レンバッハハウス美術館
- 時代
- 20世紀
- 流派
- 表現主義
紫や黄、桃色の丘を背に、青い若駒が正面を向いて立ち、首を横に傾けて考え込むように下を見る。体には白い光が走り、たてがみと蹄は濃い紺色に沈む。足もとには赤い地面と緑の草がのぞく。
概要
《青い馬Ⅰ》(独: Blaues Pferd I)は、ドイツの画家フランツ・マルクが1911年に描いた油彩画である。縦112センチ、横84.5センチのキャンバスで、ミュンヘンのレンバッハハウス美術館が所蔵する。所蔵館によれば、新しい始まりの輝きを帯びた強い象徴の力によって、マルクと「青騎士」の最もよく知られた絵の一つとなった。
画面の読み解き
画面の中央に、青い若駒が正面を向いて立ち、頭を横に傾けて、何かを思うように下を見る。馬は細い四本の脚で地面を踏みしめ、背は画面の上端近くまで届く。所蔵館によれば、角ばってぎこちなく立つ若駒は若々しい力にあふれ、わずかに砕けた形の体には白が光り、蹄とたてがみには最も濃い紺青が沈む。背景の丘は、上から青、紫、黄、桃色の帯となって重なり、右下には緑の草が大きな葉を伸ばし、足もとには赤い地面が広がり、左の端には緑の斜面がのぞく。館は、画面全体が補色どうしの対比の緊張に支配され、下には朱と緑、その上に深紅と黄、上の部分には紫と青と橙が置かれていると説明する。馬の体の青と、背景の暖かい色とが、互いを強め合う。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。所蔵館によれば、本作には、マルクの成熟した作品の多くを支える色彩論が、まれなほど純粋に表れている。マルクは1910年12月、画家アウグスト・マッケへの手紙でそれを説明した。青は厳しく精神的な「男性」の原理、黄は柔らかく朗らかで官能的な「女性」の原理、赤は荒々しく重い「物質」で、ほかの二色に打ち負かされねばならない色だという。手紙はさらに、青と橙の組み合わせを「まったく祝祭的な響き」と書く。館は、美術史家クラウス・ランクハイトの言葉を借りて、マルクがこの絵で、自然の「見かけの色」から「本質の色」へと決定的に踏み出したとする。
来歴
所蔵館によれば、本作は1965年に、ベルンハルト・ウント・エリー・ケーラー財団の寄贈で館に入った。所蔵番号はG 13324である。館の歴史によれば、レンバッハハウス美術館は、1957年にガブリエーレ・ミュンターが1914年以前のカンディンスキーの作品群などを贈ったことで世界的な美術館となり、その後、マルクとマッケの重要な支援者で収集家だったベルンハルト・ケーラーを記念する寄贈などを加えて、「青騎士」の美術の展示と研究で世界随一の拠点となった。
意義
所蔵館によれば、この絵では、青が精神的なもの、物質に対する勝利のしるしとしてはっきり示される。昔から人に尊ばれてきた馬の気高さに精神への憧れが結びつき、カンディンスキーが年刊誌『青騎士』の表紙の騎手に託した目標とも重なる。頭を垂れてたたずむ馬は、感じる心をもつ存在の印象を与える。館が紹介する美術史家ヨハネス・ラングナーの研究によれば、マルクは動物の絵に、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの絵で自然に見入るリュッケンフィグーアのような、伝統的な人物画の姿勢を重ね、動物に人の面影を与えた。この精神的な存在感は、のちの《青い馬の塔》で最も複雑な形に至ったという。