《キューピッドとプシュケ》
- 作者
- アンソニー・ヴァン・ダイク
- 制作年
- 1638–1640年
- 素材
- キャンバス / 油絵具
- 寸法
- 200.2 × 192.6 cm
- 所蔵
- ロイヤル・コレクション
- 時代
- バロック・ロココ
- 流派
- フランドル・バロック絵画
枯れ木の根もとで、青い布をまとったプシュケが仰向けに眠り込み、手もとには蓋の開いた小箱が転がる。左からは翼を広げたキューピッドが赤い布をひるがえして駆け寄り、彼女の額に手をのばす。背後には葉の茂る大木がそびえる。
概要
《キューピッドとプシュケ》(英: Cupid and Psyche)は、フランドル出身の画家アンソニー・ヴァン・ダイクが1638年から1640年頃に描いた油彩の神話画である。古代ローマの作家アプレイウスの『黄金の驢馬』が語る、愛の神キューピッドと王女プシュケの物語から、眠りに落ちたプシュケをキューピッドが見つける場面を描く。英国のロイヤル・コレクションに属し、ロンドンのケンジントン宮殿にある。
画面の読み解き
ja.wp によれば、愛の神と結ばれながら禁を破ったプシュケは、その母ウェヌスから難題を課され、最後に冥界の女王の「美」を収めた箱を持ち帰るよう命じられた。だが好奇心に負けて箱を開け、深い眠りに落ちる。画面右では、プシュケが枯れ木のそばで仰向けに倒れ、右手の近くには蓋の開いた小箱が転がる。左ではキューピッドが彼女を見つけて駆け寄り、手をのばして触れようとしている。背景には葉の茂る生命力に満ちた木が立つ。二人の体の斜めの線は、背後に斜めにのびる枯れ木と茂った木の二本と響き合い、キューピッドに触れられたプシュケがよみがえるというイメージを強めている。
技法・様式
キャンバスに油彩で描かれる。ja.wp によれば、キューピッドのひるがえる布は暖かな赤、プシュケのマントは冷たさを感じさせる青で描かれ、単純だが印象的な対比が、二人の親密さと緊張を生む。駆け寄るキューピッドの動きと眠るプシュケの静けさの対照は、物語の美と欲望の対比に重なる。英語版ウィキペディアによれば、画家の最晩年の作品の一つで、ティツィアーノの強い影響がみられる。プシュケの顔のモデルは、画家の愛人マーガレット・レモンだったとも言われる。
来歴
所蔵者のロイヤル・コレクションによれば、本作はヴァン・ダイクがチャールズ1世の宮廷画家だった時代から残る唯一の神話画である。グリニッジのクイーンズ・ハウスのために計画され、ヤーコブ・ヨルダーンスやルーベンスも加わったキューピッドとプシュケの連作の一枚だった可能性がある。その計画は完成せず、額が無く仕上げが比較的粗いのはそのためとも考えられる。1641年の王女メアリーとオラニエ公ウィレム2世の婚礼の祝いのために描かれたとする説もある。ja.wp によれば、1639年にホワイトホール宮殿で額のない状態で記録され、国王の処刑後の1651年に売られたが、王政復古ののちに取り戻された。所蔵番号は RCIN 405571。
意義
ja.wp によれば、愛と魂についてさまざまな解釈を許す新プラトン主義の理想は、チャールズ1世と王妃ヘンリエッタ・マリアの宮廷文化の中で育まれた。高い詩情、洗練された色づかい、人体の繊細な造形は、のちのフランスのロココ、とりわけヴァトーの作品を先取りしている。