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《アルバの聖母》

Madonna d'Alba
《アルバの聖母》ラファエロ・サンティ
Wikimedia Commons / ワシントン・ナショナル・ギャラリー / CC0 拡大して見る ⌕
PLATE
作者
ラファエロ・サンティ
制作年
1510年
素材
板からキャンバスへ移設 / 油絵具
寸法
98 × 98 cm
所蔵
ワシントン・ナショナル・ギャラリー (アンドリュー・W・メロン・コレクション)
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イタリアの田園を背に、聖母が幼児キリストと幼児の洗礼者ヨハネを抱き寄せる。ヨハネが差し出した細い十字架をキリストが握り、三人の視線がそこに集まる。直径94.5センチの円形画である。

概要

《アルバの聖母》(伊: Madonna d'Alba)は、ラファエロ・サンティが1510年頃に描いた直径94.5センチの円形画(トンド)である。ワシントンD.C.のワシントン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する。もとは円い板絵だったが、のちに正方形のキャンバスへ移されており、いま支持体は98センチ四方である。盛期ルネサンスのローマ時代に入った画家が、聖母子の主題を円の構図で解いた代表例とされる。

来歴

パオロ・ジョヴィオが、ノチェーラ・デイ・パガーニのオリヴェート会の教会に納めるために注文したと伝えられる。18世紀にはスペインの貴族アルバ家の所蔵となり、この呼び名が定着した。1836年、ロシア皇帝ニコライ1世が買い上げ、エルミタージュ美術館の前身である宮廷コレクションの目玉となる。ロシア革命後、財政難のソヴィエト政府が美術品を秘かに海外へ売却した際、1931年にアメリカの実業家アンドリュー・W・メロンが購入した。メロンは自身の収集品と建設費を国に寄贈し、本作は1937年に創設されたワシントン・ナショナル・ギャラリーの所蔵となった。所蔵番号は1937.1.24。

画面の読み解き

聖母は草地に直に腰を下ろし、幼児キリストを膝に抱いて、左に幼児の洗礼者ヨハネを引き寄せる。ヨハネが差し出す葦の十字架をキリストが握り、聖母もふくめた三人の視線がその一点に集まる。受難の予告である。人物は円の左寄りにまとめられ、右へ伸ばした聖母の左腕と、風をはらんだ青い上着が画面の釣り合いを取り戻す。背景はなだらかな丘と水辺の広がるイタリアの田園で、人物の背後から遠景へ視線が抜けるように開いている。

技法・様式

円という形は、上下左右に中心のない画面をどう構成するかを画家に問う。ラファエロはここで、三人の体と視線が作る三角形を円の内側に収め、聖母の腕と衣の線で円周の動きに沿わせている。フィレンツェ時代に学んだレオナルド・ダ・ヴィンチの人物の絡め方と、ローマで見た古代彫刻の量感が、この時期に一つの型として結ばれた。

意義

エルミタージュ時代の19世紀初め、板の中央と右側に大きな割れが生じたため、絵はキャンバスへ移された。背景の右端には、その作業でできたとみられる傷が今も残る。円形の聖母子という主題では、フィレンツェ時代の《大公の聖母》や《ひわの聖母》からローマ期へ至る画家の歩みを示す一点であり、またソヴィエト政府による美術品売却が名品の所在を大きく動かした例としても知られる。