《庭の女たち》
木漏れ日の庭に、白い夏のドレスをまとった四人の女がいる。縦2メートル55センチの大画面を、モネは庭に掘った溝に画布を下ろしながら戸外で描いた。1867年のサロンには落選し、友人バジールが月賦で買い取った。
概要
《庭の女たち》(仏: Femmes au jardin)は、クロード・モネが1866年に描いた油彩画である。縦255センチ、横205センチ。パリのオルセー美術館が所蔵する。印象派が生まれる前の20代半ばの作で、これだけの大きさの人物画を画室ではなく戸外制作で仕上げようとした点に、若い画家の野心が現れている。
画面の読み解き
木立に囲まれた庭の小道に、白い夏服の女が四人いる。左では縞のドレスの女がかがみ、その後ろに立つ女が花束に顔を寄せる。中央の日傘の女は草の上に大きく裾を広げて座り、膝の花を見ている。右の女は背を向け、木の枝に手を伸ばす。三人は画家の伴侶カミーユ・ドンシューがモデルを務めた。葉を透かした光が地面と衣に斑をつくり、白いドレスの影は灰色ではなく青みを帯びた色で置かれている。右下に「Claude Monet」の署名がある。
技法・様式
1866年の春、モネはパリ近郊のヴィル=ダヴレーに借りた家の庭で制作を始めた。画面が大きく上半分に手が届かないため、庭に溝を掘り、滑車で画布を下ろしながら描いたと伝えられる。視点を動かさずに全体を仕上げるための工夫である。人物の輪郭ははっきりと残り、色面は平らで、のちの細かい筆触はまだ現れていない。それでも、影に補色を置く扱いと、衣に落ちる葉の影の描写には、屋外の光を正面から扱おうとする姿勢が見てとれる。
来歴
1867年のサロンに出品したが落選した。審査員は主題の弱さと筆の粗さを退けたと伝えられる。同じ年、友人の画家フレデリック・バジールが困窮するモネを助けるため2,500フランで買い取り、月50フランずつ支払った。のちに絵はモネの手元へ戻り、1921年、フランス国家がリュクサンブール美術館のためにモネから購入する。所蔵番号RF 2773。ルーヴル美術館を経て、1986年の開館とともにオルセー美術館へ移された。
意義
サロンの大作にふさわしい大きさで、神話でも歴史でもない同時代の女性たちを、屋外の光の下に置いた点が新しかった。落選はしたが、この試みは1870年代の印象派の画面へ直接つながっていく。オルセー美術館とフランス美術館修復研究センター(C2RMF)による修復が2022年に終わり、黄ばんだニスが取り除かれて、白の輝きと緑の深みが戻った。