《聖母のエリザベト訪問》
青い外套のマリアを、黄色の衣のエリザベトがひざまずいて抱きとめる。左右には二人の聖女が立ち、背後の大きなアーチの向こうには、霧にかすむ町と山並みが広がる。
概要
《聖母のエリザベト訪問》は、フィレンツェの画家ドメニコ・ギルランダイオが1491年に描いた祭壇画で、パリのルーヴル美術館が所蔵する。館の記録では、ポプラ材の板にテンペラで描かれ、縦172センチ、横167センチ。所蔵番号はINV 297(ほかにMR 240)で、ドノン翼のグランド・ギャルリー(710室)に展示されている。館の題は「マリア・ヤコベとマリア・サロメのいる聖母のエリザベト訪問」。館によれば、フィレンツェのロレンツォ・トルナブオーニが、チェステッロの聖堂(1628年からサンタ・マリア・マッダレーナ・デ・パッツィ聖堂)にある自分の礼拝堂のために注文した。ティッセン=ボルネミッサ美術館によれば、ロレンツォ・トルナブオーニは1486年にジョヴァンナ・デッリ・アルビッツィと結婚し、ギルランダイオはその妻の姿を《ジョヴァンナ・トルナブオーニの肖像》に描いている。
画面の読み解き
画面の中央では、青い外套を着たマリアが、ひざまずいて抱きとめるエリザベトに身をかがめる。館の記録によれば、背後の凱旋門の右下には「1491年」の年記があり、上部には二人の聖女の名が大文字で記されている。日本語版ウィキペディアによれば、両脇の二人の女性は、アーチの銘が示すとおりクロパの妻マリア(マリア・ヤコベ)とサロメであり、幅広の黄色い衣のエリザベトは、マリアに敬意を表してひざまずいている。背景には古典的な大きなアーチがあり、その中央に風景が描かれる。同じ記事は、霧のかかった背景の町には凱旋門とパンテオンが含まれており、ローマを再構成したものかもしれないとする。
技法・様式
日本語版ウィキペディアによれば、本作は、ギルランダイオがフィレンツェでフランドル絵画から学んだ光の屈折の効果をはじめ、多くの細部を特徴とする。サロメの衣は、フィリッポ・リッピの《バルトリーニの円形画》からの引用で、その円形画は、ギルランダイオやボッティチェッリらの作品に現れる優美な人物の源になったという。同じ記事は、人物の様式の違いが、おそらくセバスティアーノ・マイナルディら工房の助手の手が加わったことを示すとしている。館の記録によれば、板の裏面には肉眼でも見える渦巻き模様があり、赤外線反射撮影によって人物の習作も見つかっている。
来歴
館の記録によれば、本作は、ジョルジョ・ヴァザーリが1550年と1568年の『芸術家列伝』で、ドメニコの兄弟ダヴィデとベネデットが仕上げたものとして挙げたとおり、1812年まで聖堂に掛けられていた。1812年8月にフランス軍によって取り外され、ルーヴルへ運ばれた。
意義
館の文献欄によれば、本作は、2011年11月にルーヴルで開かれた、館の絵画の裏面を見て回る催し「絵の裏側」(ギヨーム・キアンツ)で取り上げられた。また、ナポレオン美術館の目録(1810〜1815年)の第1巻に載ったイタリア絵画を扱う、ステファーヌ・ロワールの2025年の研究にも収められている。画家の伝記で知られるように、ギルランダイオは兄弟とともに大きな工房を営んでおり、ヴァザーリの記述は、その工房が祭壇画を仕上げていたことを伝えている。